泉ピン子さん(撮影/藤岡雅樹)

泉ピン子さん(撮影/藤岡雅樹)

私もあんな死に方がいい

 そんな橋田さんの最期を見て、「私もあんな死に方をしたいと思った」と、泉さんは語る。

「病院から戻ったら、自宅の窓から満開の桜が見えて、『ママ、桜だよ』って。何十年もかけて大きくなった桜が、絵画のようになってね。それが、ママが亡くなったら雨が降って全部葉桜になったの。周りにはお手伝いさんや私や友達がいて。そんな理想的な死に方ってある? 最高ですよ」

 結局、橋田さんが考えていた「安楽死」とは違うかたちとなったが、周囲からは穏やかな最期に見えたという。泉さんはこの経験を通して「死について考えた」と続ける。

「いくら安楽死を望んでいても、死期に合わせて(外国人でも安楽死ができる)スイスに行けるわけではない。そもそも『100歳まで生きる』と言っていた人が、あんなに急に死ぬんですからね。ママを見て、『自分の思った通りには死ねないんだ』って、改めて難しさを感じました」

 また、橋田さんの延命治療を止めたことについては、複雑な心境を語る。

「ママは、本当は死ぬことが怖かったんじゃないかな、とも思うんです。口では『安楽死、安楽死』って言っていたけど、本当はすごく臆病で、もっと生きたかったんじゃないかな。そうでなければ、血液検査のために毎月2回も病院に通わないし、あんなにたくさん薬を飲まないでしょう。

 でも、もし私が同じ立場だったら管を抜いてほしい。だから、その判断について後悔はしていないという気持ちです」

 そう言った後に、「でも正直、ずっと後悔はするかな。間違いじゃなかったのかなって……」とも付け加えた。安楽死や尊厳死は、本人にとって重大な問題であるとともに、残された者にも葛藤がつきまとう。

戒名はいりません

 橋田さんは生前、エンディングノートを書いたと話していたというが、「亡くなってみたら、それがなかった」という。

「全部細かく書いてあるって言ってたのにね……。ママが言っていたのは、『お別れ会をしないでくれ』『誰にも知らせないでくれ』だった。“華やかな葬式をしてくれ”って言うと思っていたから意外でした。

 だからお葬式はごく簡単なものにして、霊柩車も使わず、ただのバンみたいな車。お棺も焼いちゃうんだから一番安い木にして、お葬式には39万円くらいしかかかってないの。お経は私があげて、戒名はいらないって言っていたから、『橋田壽賀子』ですよ」

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