「我々は国の品格と国力に見合った約束をした。先進国と開発途上国の懸け橋を担うことを強調できた。1907年にハーグで開かれた万国平和会議では、日本の朝鮮侵略・略奪を訴えようとした密使・李儁(イ・ジュン)は会議場にすら入れなかった。その韓国が今や、民主主義、防疫、環境問題で堂々と意見を述べ、行動する国家になったのだ」
なんとか成果を強調したい気持ちがにじみ出ているが、残念ながら文氏が署名したのはG7共同コミュニケではない。付属文書の「オープン・ソサエティズ・ステートメント」(開かれた社会を有する諸国による声明)だ。この文書の意味は、法治主義や民主主義、言論の自由、人権を無視する中国に団結して立ち向かうことを国際公約した「証文」である。
文氏が渡英する直前、中国の王毅・外相は、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官に電話して、「韓国は中国の友好的な隣国であり、戦略パートナーだ。くれぐれもアメリカの偏った動きに惑わされないように、流されないように」と釘を刺していた。青瓦台はこの中国の圧力を隠していたが、韓国の外交専門家は「属国扱いの脅迫だ」と憤慨している。
お土産もなく帰国した文氏は、中国からの報復も覚悟しなければならない。米中韓関係を長年ウォッチしてきた米シンクタンクの研究員はこう語る。
「英語にNavel-gazing(自分のヘソを凝視する=自己陶酔)という表現がある。今の文在寅氏と取り巻きは、まさにそれだ。米中両国の戦略的パートナーに同時になれるはずがないのに、それがわかっていない」
自分のヘソばかり見ていて、国際情勢のヘソがわかっていなかったということか。
■高濱賛(在米ジャーナリスト)