ビジネス

自粛を守る飲食店主が「闇営業しないなんてコロナ脳」と中傷される複雑な事態

闇営業しないことを責められるようになるとは思ってもいなかった(イメージ)

闇営業しないことを責められるようになるとは思ってもいなかった(イメージ)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を防ぐために、飲食店は大声で談笑しやすくなる種類の提供を止めたり、営業時間を短くするよう求められてきた。それに逆らって深夜まで営業し酒を提供することは「闇営業」と咎め立てされたものだが、東京都の休業命令に反論する飲食店チェーンが現れるなど、飲食業界内部で捉え方に変化が出てきている。緊急事態宣言が終了しても「飲酒は19時、2人まで」など制限の要請は続く見込みだが、今後はどう受け止められるのか。ライターの森鷹久氏が、「闇営業」をめぐる奇妙な圧力についてレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルス感染者数が全国的に減少傾向にある中、緊急事態宣言発令下の地域でも、行政の要請に従わない形で「闇営業」に踏み切る飲食店が増えた。その事実はこれまで何度も報じられてきたが、飲食店の実情を聞くと、反発から闇営業というだけでは語りきれない様子が見えてきた。ここにきて、予想外の「外圧」に悩む飲食店関係者が現れ始めたのである。

「私はきちっと政府や都の指導に従っているだけ。感染者をこれ以上出さない、ということが一番重要なはずでしょう?」

 東京都内で複数の居酒屋経営する森永祐作さん(仮名・40代)は、コロナ禍以降、経営状態が逼迫するなか、「自分の店で感染者を出したくない」という強い思いから、時短営業や休業を受け入れてきた。しかし、2020年秋頃には、自身の店の近隣店舗が闇営業を再開。多くの客が訪れているのを見て、固い意思が揺らぎそうになったこともあったが、今日まで「闇営業」と後ろ指を刺されるようなことは一切やっていないと胸を張る。

 しかし、周囲の複数の店が闇営業を始めた2021年5月以降、飲食店経営者仲間から驚くべき暴言を吐かれたと訴える。

「お前『コロナ脳』か、と闇営業している飲食店仲間から揶揄されるようになりました。彼らの中には感染者数が減ったことや、闇営業をしていても客から感染者がほとんど出ていない、という自信があるようで、休業や時短営業を継続している店主が気に食わないのです」(森永さん)

 ある旧知の飲食店店主などは、SNS上で森永さんのような自粛組を「いまだに政府の嘘を信じるバカ」と名指しで中傷。そこに寄せられた同業者のコメントには「コロナは風邪」といった書き込みもあり、主張の違いはあっても同業の仲間だという思いも裏切られ、もはや誰を信じていいかわからないほど人間不信に陥っているという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン