生徒たちがくれた「励ましの手紙」
大学卒業後に小学校の教諭となり、30歳となった今井が出会ったのが自転車だ。最初は冬季にオフロードを走るシクロクロスにどっぷりはまり、大会に出場すると瞬く間に全国のトップに。2017年には同競技の世界選手権にも出場した。
「だけど全然ダメで、ボロボロになった。今後もチャレンジするには何かを変えないといけないと思って、夏の競技で、より過酷な路面状況で走るマウンテンバイクを始めた。やるなら中途半端はイヤなので、東京五輪を目指そうと思ったんです」
東京五輪に向けた代表選考レースは2019年に集中する。職場の支えを受けて世界のレースを転戦しながら、帰国しては授業を担当するハードスケジュールを乗り切り、日本代表を勝ち取った。
しかし、公務員という立場では、特定のスポンサーから手厚い支援を受けたり、特定のメーカーから機材の提供を受けたりすることは難しいはずだ。
「それもありますけど、自分が使いたい機材はなるべく自分で揃えたいんです。その方が大事にするし、思い入れも生まれます」
開幕をおよそ40日後に控えたインタビューは、合宿中の今井とリモート形式で行なった。だが、どうも今井側の電波状況が悪く、映像が度々、フリーズしてしまう。改めて電話を入れ、合宿地を聞いて合点がいった。
「今、御嶽山の麓で高地トレーニングを行なっていて。宿舎のWi-Fiをみんなで取り合っている状況なんです(笑)」
マウンテンバイクはおよそ4キロのコースを規定の回数、周回する。ロックセッションの多い東京五輪のコースに対応すべく、まさに追い込んでいる時期の様子だった。初の五輪へ向け、意気込みをこう語った。
「最後の授業の日、子供たちが『先生頑張ってね!』とか、『応援してるよ!』と、たくさん手紙をくれた。子供たちは金メダルを持って帰るのを期待しているんでしょうけど、現実的には……(笑)。完走が最低で最高の目標。この競技で日本人初となる完走を達成して、子供たちにはやりきったと報告し、五輪に出て感じたこと、海外選手の様子を伝えたい」