国際情報

高齢化で広がる中国の医療格差 診察券求める徹夜組、行列にダフ屋も

中国の「医療格差」の実態とは(写真=Imaginechina/時事)

中国の「医療格差」の実態とは(写真=Imaginechina/時事)

 7月1日に創立100周年を迎えた中国共産党。習近平指導部は2050年までの「超大国化」を掲げるが、それと同時並行で前例のない超高齢社会に突入する。中国国家統計局によると、2020年の中国の総人口は14億1178万人。出生率が過去最低となる一方、65歳以上人口は約1.9億人に増え「少子高齢化」が顕著になった。2022年にも人口減少に転じる可能性が指摘され、政府系シンクタンクの試算では2050年に60歳以上が5億人に迫ると予想される。

 そうしたなか憂慮されるのが、年金をはじめとする社会保障の問題だ。

 中国の公的年金は現役世代が高齢者を支える賦課方式で、大きく分けて2種類ある。公務員や会社員らが加入する年金と、農村住民らが加入する年金だ。このうち、4.6億人が加入する前者について、政府系機関の中国社会科学院が「2035年に積立金が枯渇する」との調査報告を発表した(2019年)。

 ニッセイ基礎研究所保険研究部准主任研究員の片山ゆき氏が言う。

「中国政府は年金積立金の全国統一や定年退職年齢の段階的な引き上げ、民間の個人年金の積極活用などで年金財政の改善を目指すとしていますが、決して楽観視はできない状況です」

 年金同様、医療体制も逼迫している。都市と地方、大病院と中小病院の「医療格差」は大きく、患者は都市の大病院に集中。李克強首相も「看病難、看病貴(診察を受けるのが難しく費用も高い)の問題は深刻」と表明するほどだ。

 コロナ禍以前から、北京などの大病院では診察券を求めて家族ら数百人が徹夜で並ぶ光景があった。そこに「ダフ屋」が現われ、数百円程度の診察券を数千円から数万円で患者に転売するケースもある。高齢化が進めば、混乱に拍車がかかるのは避けられない。

※週刊ポスト2021年7月16・23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン