980gだった娘はいまや「ちょっと丸いかも?」
和さんは青森で暮らしていた2018年11月、21才で「ステージIVの大腸がん」と宣告を受けた。約1年後の2019年12月、かねてから交際していた将一さんと結婚し、2020年7月に娘を出産。その道のりは平坦なものではなかった。
「妊娠中、がんが卵巣に転移してしまったんです。本来なら妊娠40週までお腹で育てたかったんですけど、主治医から『28週までに出産して治療を始めないと、あなたの命がもたない』と言われて……。早産は赤ちゃんにとってリスクで、自発呼吸ができない可能性も説明されていたので、正直、私は死んでもいいから赤ちゃんを助けてあげたい、守りたいと思っていました」
念のため27週で入院するも、和さんの体調は急変。急きょ、帝王切開での出産が決まった。幸い母子ともに無事だったが、娘は超低出生体重児で肺が未熟だった。
「体重980gで生まれた娘は、すぐにNICU(新生児集中治療室)へ運ばれました。私は卵巣摘出手術のため継続して入院することになり、娘と揃って退院できたのは3か月後の10月でした」
過酷な出産体験からはや1年。娘は7月9日に、無事1才を迎えることができた。
「離乳食は、ほとんど好き嫌いなくよく食べてくれます。唯一、きゅうりが苦手かな。お散歩をしていると、周りの人から『まだ0才なの? 1才は過ぎてると思ったよ!』と声をかけられるほど、娘は順調に育っています。むしろ、ちょっと丸いかも?(笑い) 出産直後は不安だったけど、本当に安心しています」
入院日数の分は離乳食を作り置き
闘病中の育児には、不自由なこともあるという。
「いま私は人工肛門をつけているので、重いものを持つと腹圧がかかって脱腸してしまう可能性があるんです。だから、娘が泣いても抱っこではあやせないし、離乳食をあげるためにベビーチェアに乗せることもできません。
あと、娘はモノを引っ張るのが大好きなんです。私の点滴の管にも興味を持ってしまうので、抜いてしまうんじゃないかと思うと怖いですね。ひとりでは育児ができないので、夫や妹たちに協力してもらっています。夫はもちろん、妹たちも私以上にママをやってくれていて、本当に感謝しています」
力仕事が難しい和さん。熱量を注いでいるのが料理だ。