筆者が海の家のスタッフに話を聞いていたところ、間に入ってきたのは酒瓶を片手にベロベロに酔っ払った20代と思しき女性。
「もう(取材なんか)いいから! みんなコロナかかってるっしょ! 若いから大丈夫! 危険なの? だったら死ぬから、その前に死ぬほど飲ませて!」(女性)
女性は筆者の至近距離でノーマスクでこう捲し立てた後、知人とみられる男性に連れられどこかに行ってしまった。
新規感染者のほとんどが「デルタ株」感染だと言われており、これまでとは違い、若い人でも感染すると命に関わる重篤な症状が出ることも確認されている。小中学生が通う塾などでもクラスターが発生し、若いから大丈夫、とはとても言っていられないフェーズに突入している。だが、2年ぶりの海の家に集まる若者たちには、その怖さがこれっぽっちも届いていないというのが現状のようだ。
彼らのことを、一部の無軌道な若者たちだと、そして彼らに便乗して商売をする人たちをあさましいと断じて非難するのは簡単だ。だが、彼らも一年前は、一緒に辛抱していたのだ。
すでに緊急事態宣言下の繁華街でも、もはやこっそりではなく、堂々と時短要請を無視し、酒類の販売も行う飲食店は珍しくなくなった。海の家に集う彼らを見て、顔をしかめ、できるだけ近づかないようにしよう、というのは現在の一般的な感覚かもしれない。
だが、彼らのように、見えやすい、わかりやすい場所で大騒ぎしないだけで、外での飲酒に興じる人々は山ほどいる現実を、私たちは知っている。いま生まれつつある分断を固定したものにしない工夫はできないものか。