【2】共用スペースがある
同病院で最初に感染者が出た3階には男女共用の大きなホールがあり、入院患者は自由に出入りすることができた。勝田氏が語る。
「施設内の男女共用スペースは、デイルームと呼ばれます。そこに患者が集まれば感染拡大の要因になります。ただ判断が難しいのは、高齢者病院や施設の認知症のある人の場合は、一日中ベッドで寝ていると状態が悪くなることで、デイルームに行くよう促すのも治療の一環です。作業療法としてデイルームなどでリハビリを指導することがプログラムに含まれるケースもあります。高齢者にとって大切な場であることは間違いありません」
同病院には各階に自動販売機があり、患者は自由に利用することができたという。
医療経済ジャーナリストの室井一辰氏はそうした共用スペースにも注意が必要と語る。
「病院では、入院患者と外来患者が往来する院内の売店に、医師や看護師などの医療従事者も多く訪れます。なかには院内の食堂を医療従事者以外が利用できるケースもあります。コロナで中止しているところもありますが、不特定多数が出入りする共用スペースは感染リスクが高くなるので要注意です」
【3】窓が開けられない
病院や高齢者施設特有の安全対策でつくられた構造が、感染拡大につながることもある。前出・勝田氏はこう指摘する。
「一般的に精神科を中心とする病院や高齢者施設は、事故などを防止するために病室の窓が開けにくい構造になっています。必然的に換気が難しくなり、病室内の感染リスクが高まります」
うるま記念病院の病室は基本的に6人部屋だった。同病院の広報担当者も換気の困難を認める。
「当院は老年精神科病院のため全面的に窓を開放して換気することは難しかった。危険を伴わない範囲で可能な限りの換気に努めていましたが、十分でなかったとは考えられます」
【4】エレベーターが1基だけ
うるま記念病院によると、病院内にエレベーターは1基だけだった。そのため、勤務する医療関係者は不安を口にした。
「1基しかないエレベーターで、患者の食事の配膳もすれば、医療廃棄物や汚染物、遺体の搬送などでも使用することになり、対策に限界を感じる」
前出の勝田氏は「飛沫感染にも注意が必要」と語る。
「現在の研究では、接触感染よりも飛沫感染のリスクのほうが高いとされます。エレベーターなどの狭い室内でマスクをせず、くしゃみや咳をすると感染リスクが高まるので注意すべきです」