接種したいワクチンを自分で選べる未来
創薬ベンチャーのアンジェスが開発を進めるのは「DNAワクチン」。
「人工的に合成したコロナウイルスの遺伝情報(DNA)の一部を体に打ち込み、免疫反応を呼び起こすワクチンです。他のタイプのワクチンが2回接種を想定するなか、アンジェスのワクチンは2~3回接種を想定しているようです」(一石さん)
生物学的製剤製造業を営むKMバイオロジクスが進めるのは「不活化ワクチン」だ。
「不活化ワクチンは感染性や増殖性を消失させたウイルスそのものを体内に注入して、免疫反応を誘導します。最も古いタイプのワクチンの1つで、製造工程はそれほど難しくない。これまで多くのワクチンが作られた技術なのでコロナで未知の副反応が現れることは考えにくく、最も安全性が高いワクチンといえます」(室井さん)
KMバイオロジクスの広報担当者はこう話す。
「1年で3500万回分の製造を目指しており、遅くとも2023年度中には実用化したいと考えています」
創薬ベンチャーのVLPセラピューティクス・ジャパンは、「自己増殖型mRNAワクチン(レプリコンワクチン)」というタイプ。
「レプリコンワクチンは自己増殖作用のあるRNA分子にウイルスの遺伝情報を組み込んだワクチンです。接種後に成分が体内で自己増殖するため、少量の接種で免疫反応を誘導できます」(一石さん)
VLPセラピューティクス・ジャパンの広報担当者が進捗状況を語る。
「今年10月から第Ⅰ相試験を大分大学医学部附属病院で開始する予定で、2022年に承認申請を経て実用化することを目指します」
一石さんが国産ワクチン実現への期待を述べる。
「ワクチンで最も重要な評価基準はウイルスに対する有効性です。日本のワクチン開発は経験値の低さや承認基準の厳しさなどの壁がありますが、メーカーの努力に期待したい。各社のワクチンが実現すれば、自分が接種するワクチンを自分で選べるような未来がやってくるはずです」
シオノギは年度内にも供給―いまから半年後ならば、「3回目」に間に合う人は少なくないはずだ。しかし、数は限られるので、すべての希望者が「国産」を接種できるわけではない。“争奪戦”になるのは、容易に想像できる。
「医薬品の分野でも、世界では『メイド・イン・ジャパン』の信頼性は高い。中国製のワクチンに疑念を抱いている中国人や、いまだにワクチンの確保が難航している韓国人など、アジアの富裕層が日本製ワクチンに殺到し、一部は海外に流出するかもしれない」(医療ジャーナリスト)