これまで『週刊ポスト』では、日本病院薬剤師会が取りまとめた多剤服用への対応事例集などをもとに、「併用注意」の組み合わせが処方されたケースが多数ある現実について報じた。
一方、「併用禁忌」となると、命にかかわる重篤な症状を起こすことがある。そもそも両者の違いは何か。内科医の谷本哲也氏(ナビタスクリニック川崎)が解説する。
「併用注意とは、相互作用による代謝への影響で血中濃度が変化するなどして、軽い副作用が増えたり、有効性が下がったりする可能性がある薬の組み合わせを明示したものです。医師の責任において併用しても良いが、その場合は注意を要するというもの。
一方、併用禁忌は命の危険があり入院治療が必要となるなど重度の副作用が出る可能性がある薬の組み合わせのことです。併用で必ず弊害が起こるわけではありませんが、避けることがベストです」
そうした危険な組み合わせであれば、冒頭で長澤氏が言うように、医師が処方薬を選択する際に電子カルテ上で警告表示があるはずだ。にもかかわらず、実際に「併用禁忌」の処方が行なわれている現実がある。
「医師や薬剤師が見落としていることが一番の理由です。実は薬の種類が5~6種類になると、端末画面には『併用注意』の警告が常に出ているのが普通です。そこで『併用禁忌』が見分けられなかったケースは容易に想像できます。それでも、『注意』と『禁忌』では大きな差がある。ほとんどが医師の“うっかりミス”だと考えられます」(長澤氏)
※週刊ポスト2021年10月15・22日号