唐津市は当初「損害賠償の責任はない」との見解を示していたが、今年4月、明日香さんら遺族に「示談だったら応じてもよい」。その場合は明日香さんに非があるというところからスタートする、ともちかけてきた。明日香さんらにとっては、とてものめる条件ではなかったが、国や県や市を相手に、もう自分たちではどうすることもできない、このまま泣き寝入りするしかないのか・・・・・・と思い詰めていた。
「納得いかないけど、もうどうしょうもないのかな、とあきらめかけていました。友達に『テレビに出てくるような正義感のある熱血の弁護士さんや検察官があらわれて助けてくれたらいいのに』なんて愚痴をこぼしたら、『テレビの見過ぎ』と言われました」
それが、あることがきっかけで、大逆転が起こり始めた。
「息子を亡くしてから悲しみのどん底にいたとき、たまたまTik Tokで小野裕人さんというアーティストが絵を描く過程の動画を見つけ、衝撃を受けたんです。こんなにそっくりに描いてもらえるなら・・・と思いきって、息子の絵を依頼をしたのがきっかけで、奇跡的なことが起こりました。
“ひまわりのように明るく元気だった息子をずっとそばで感じたい”という私の願い通り、ほんとうに絵の中から息子が見守ってくれているようなキャンバス画を描いていただけました。そして小野さんは、息子のことを忘れてほしくないという私の気持ちをくみ取って、辿皇の絵の制作過程や事故について伝える動画(『ひまわり~てんこう君に捧ぐ~』)をYou Tubeやインスタグラムでも発信してくれたんです。
そこから応援してくださる人がどんどん増えていったんです。あたたかい励ましのコメントやひまわりの花、息子に供えるお菓子など多くの方から送っていただいたり。危険な松の木の適正管理を訴える署名活動(10月末まで)に賛同してくださる方の輪も、全国だけでなく海外まで広がりました」(明日香さん)
さらに、小野さんの動画から縁がつながって、『一般社団法人 関東交通犯罪遺族の会』代表理事の小沢樹里さんに相談にのってもらうことができた。親身になって聞いてくれた小沢さんが、「遺族の立場をわかってくださる信頼できる弁護士の先生」として紹介してくれたのが、池袋暴走死傷事故の遺族側の代理人弁護士も務める高橋正人さんだった。
「ほんとうにドラマみたいな急展開が起こっています。大きな事件や事故をいくつも担当していらっしゃるお忙しい弁護士の先生だから、私みたいな一般人が頼めるんだろうかと思ったんですが、『私でよければ、お受けしますよ』と言ってくださって。すぐに、佐賀までいらして現場検証や佐賀地検に行ってくださったり。全国の他の三大松原の管理状況を調べるために、地方まで飛んでくださったり。ものすごいスピードでことが運んでいます」(明日香さん)