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木下ほうか ずっと演じたかった「ヤクザのリアルな哀愁」

「こういうヤクザもんがやりたかってん!」と語った木下ほうか

「こういうヤクザもんがやりたかってん!」と語った木下ほうか

 この秋の連続ドラマ「ムショぼけ」(ABCテレビ・日曜23時55分~、テレビ神奈川・火曜23時~)が注目を集めている。ロケはオール関西。しかも、深夜ドラマらしからぬ「映画クオリティ」だと評判なのだ。

 主人公の元ヤクザ・陣内宗介(北村有起哉・47才)の兄貴分で、ヤクザを引退して自営業を細々と営む、枯れた初老の男性・平松を演じるのが、ベテラン俳優・木下ほうか(57才)。このたび、ドラマの原作小説『ムショぼけ』(小学館文庫)の著者で、元ヤクザ最高幹部という異色の経歴を持つ小説家・沖田臥竜さん(45才)と対談した。

 同作は、長い刑務所暮らしで社会と隔離されていた元ヤクザの中年男性の主人公が、出所後に世の中の環境の変化についていけずに戸惑いながらも、家族やかつての極道の仲間たちと怒って笑って、時にヘコんで涙を流すという、一風変わった任侠ドラマ。従来の“ヤクザ作品”でイメージされるようなバイオレンスな要素は少なく、世間の日陰者たちのリアルな悩みや哀愁をユーモアに描いたヒューマンコメディーである。

 Vシネマや映画などで、数々のヤクザ映画に出演してきた木下は、地上波のテレビ連続ドラマで放送できていることに驚いていた。

木下:令和になったいま、任侠ものはコンプライアンス的にもやりにくいことは否めません。しかも、それをテレビドラマでできることがすごく意外で、オファーをもらったときから驚きましたよ。最近は映画界でもギリギリなんです。近年、僕が出演したヤクザものの映画も相当神経を使っていました。だから今作『ムショぼけ』は画期的じゃないでしょうか。

沖田:「元反社者が社会に対してどう溶け込んでいっているか」というヒューマンドラマなら、コンプライアンスにも収まるという判断でした。その枠組みを、企画・脚本などを通じてすべて作ってからテレビ局へアプローチした結果、「ぜひやりましょう」となったんです。僕が在阪テレビ局で番組のコメンテーターなどで出演していたことも、信頼してもらえた理由だと思います。

木下:「ムショぼけ」って、いわゆる長期服役による拘禁症状ですよね。その題材は、一言で言えば「ええところに目を付けられたなぁ」と思いましたよ。

【作品では、主人公が、刑務所内で名前ではなく番号で呼ばれていたこと、独房で壁に向かって独り言しか言えなかったこと…。そんな変な癖が抜けずに、一般社会に出たあとでも思わず出してしまう。懲役中に、携帯電話がガラケーからスマホに様変わり、その使い方に戸惑う姿など、そんな滑稽さが随所で描かれている】

木下:ドラマを見る前と後で、視聴者の印象は全く違ってるでしょうね。ヤクザもののドラマかと思いきや、コメディ要素が多い。「あ~、そういうことなんだ」っていう意外性からくる高ぶりで、「このドラマはおもしろいで!」という口コミが広がっている気がするんですよね。

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