柳家小三治。小さん、米朝に次ぐ3人目の落語家の人間国宝である。思えば“志ん生・文楽の時代”からあとの昭和から平成の名人達人が10年おきに亡くなっている。ふと気がついたら不思議なものだった。2001年には古今亭志ん朝が、2011年には立川談志が、そして2021年の柳家小三治である。みごとに10年にひとり。そう考えると10年後の2031年には誰が……と見渡してみたら、この年には誰も死なないことが分かった。
50年以上前大学生だった私のルーティンといえば新宿紀伊國屋ホールで「談志ひとり会」へ行き内幸町のイイノホールの「二朝会」へ欠かさず行く。「二朝」とは志ん朝と柳朝である。そして上野の本牧亭へ行き「さん治・さん八の会」である。まだ二ツ目という身分のふたり。真打となった小三治、そして盟友・入船亭扇橋である。我が“古典落語の青春時代”のようなものだった。
イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2021年11月5日号