その秘訣は、有権者に「期待」を持たせ続けていることだ。立憲民主党の辻元清美氏(大阪10区)は総選挙前、「維新はローカル政党。眼中にない」と発言して維新の闘争心に火を付け、吉村氏に「眼中に入ってやる」と応戦されて落選に追い込まれた。辻元氏が語る。
「吉村知事や松井市長はとにかく『見せ方』を意識して動いている。コロナ対策で雨合羽の寄付を募ったり、感染者を1か所に集める野戦病院のような大規模医療施設を立ち上げるなど、いろんなアイデアを出し、常に何かやっていることを見せる。33万枚集まった雨合羽は結局使われたのか、野戦病院も必要な人数の看護師が集まるかなど疑問があるが、印象には残る。
効果のほどは分からなくても、大阪はテレビのローカル番組が多く、お昼や夕方の情報番組やニュースに吉村知事が毎日出演してそれをアピールするわけです。そのうえ、維新の選挙戦術が半端じゃない。自分の所はもう勝てると踏んだ他選挙区の地方議員らが接戦区に入って、駅頭、街頭でビラを撒く。投票日2日前には吉村知事自身が公務そっちのけで一日中演説して回る。これで街の空気が一気に変わってしまう」
実際、吉村氏はコロナ感染拡大以来、失敗しても新たなコロナ対策を打ち出し、選挙中を含めて連日のようにテレビなどメディアに登場して府民にアピールを続けた。
それだけではない。これまで維新の創設メンバーの橋下氏や松井氏の“パペット”と見られていた吉村氏自身、選挙戦を通じて“大化け”し、維新の指導的政治家として独り立ちしてみせた。
野党系無所属の渕上猛志・堺市議はそのプロセスを目の当たりにしたという。
「コロナ対応から府民の空気が変わり、年配層の女性などが吉村知事を熱心に応援するようになった。吉村さんはモノはハッキリ言うが、橋下さんや松井さんのようにコワモテではなく、どこかかわいげもある。そしてコロナで頑張っているように見えます。大阪のご婦人たちは彼を自分の息子のように感じていたんじゃないかと思う。少なからぬ失政があっても、自分の息子だから悪意のない失敗なら許し、支えようとするわけです」