* * *
同時期に『なごり雪』がヒットした歌手のイルカも。『木綿のハンカチーフ』に強い思いを抱いているという。イルカが、名曲について語る。
* * *
『木綿のハンカチーフ』と『なごり雪』は、ヒットしたのが同じ時期。『木綿の~』って曲調は明るいですが、ハッピーエンドに終わらない。当時の私は“結局、遠距離恋愛って結末はそういうことになっちゃうんだ”と、乙女心に寂しさを感じたというか、現実を知ったところがありましたね。
あの頃は青森にコンサートに行くと、夜汽車で帰って明け方に上野駅に着くという時代でしたから、恋人同士ともなれば、一度、都会と故郷とで離れたら、今度いつ会えるかわからない。いまならさまざまな形で相手とつながる手段がありますが、当時は手紙を書くか、電話に限られていました。それが余計に“会いたい”という思いを募らせ、心を燃え上がらせるものになっていたのかもしれません。そう考えると、とてもロマンチックですよね。
近頃の昭和歌謡ブームは、昭和が客観的に見えるようになったからだと思います。物も少なく不便ではあったけど、のどかで精神的に幸せを感じられる時代でした。いまの若い人たちは物質的には恵まれているけれど、そこに魅力を感じているのかもしれませんね。
最近、裕美ちゃんとジョイントコンサートを開催しているんです。同じ時代を歩いてきたわけですが、実は『なごり雪』も『木綿の〜』も1位になれなかったんです。『およげ! たいやきくん』が2~3か月ずっと1位を獲得していて(笑い)。「タイミングが悪かったね」って、裕美ちゃんと笑って話したりするんですよ(笑い)。
でも、こうしていまでも息長く歌い続けていられる。「私たちはすごくラッキーな曲に巡り合えたね」っていうのは共通の思いです。
【プロフィール】
白川隆三さん/1968年、CBSソニーの創業と同時に入社。ディレクターとして太田裕美や大滝詠一などを手がけた。2003年4月に「アニプレックス」取締役会長に就任。
イルカ/1974年ソロデビュー。翌年、『なごり雪』が大ヒット。今年でデビュー50周年を迎えた。現在、クリスマスソング集『冬の贈り物』が絶賛発売中。
取材・文/加藤みのり
※女性セブン2021年12月2日号