紅白史上、最高視聴率を記録したのは、1972年の80.6%。1980年代前半は70%台をキープし、大晦日は紅白を見ることが国民的行事となっていた。だが’80年代後半からは下落傾向に。平成元年(1989年)にはリニューアルされ、開始時間が早まったものの、平均視聴率は42.7%という結果に。その後は40%前後を行ったり来たりで、昨年は40.3%(※)だった(関東地区の数値・ビデオリサーチ調べ)。
【※平成元年から紅白は2部制に。数値は後半(21時~23時45分)である2部の世帯視聴率】
視聴率低下の理由として挙げられるのが、視聴者の高齢化だ。男女年齢層別の個人視聴率を見ると、65才以上の女性が最も多く36%、次が50~64才の女性で33.8%になっている(スイッチメディア調べ)。
「若者に見てもらおうと、演歌枠を削って若いアーティストの数を増やしていますが、すると今度は高齢者層が『知らない歌手ばかりでついていけない』とそっぽを向く。完全に悪循環に陥ってしまっています」(前出・芸能関係者)
ここ数年は、紅白に呼ばれなくなったベテラン歌手の「卒業宣言」も相次いでいる。今年は五木ひろし(73才)が出場者発表の1か月前に「昨年50回を迎え、大きな区切りをつけました」と舞台を去った。
歌以外の要素を取り入れた「特別企画」も反応が分かれる。昨年は朝ドラ『エール』のキャストが登場し、最終回で放送された歌謡ショーを再現。『長崎の鐘』や『高原列車は行く』など、窪田正孝(33才)演じる主人公のモデルとなった古関裕而さんが作曲した楽曲を出演者が歌い上げた。
こういった企画に「賑やかで面白い」という声がある一方で、「もっとしっかりプロの歌手の歌が聴きたい」と困惑する視聴者も多いという。
井上陽水は「恥ずかしい」
あれこれ手を尽くしても、上がらない紅白人気。その要因は、今回のOfficial髭男dismのように「人気者でも出なくなっている」ことにもある。もちろん、昔からすべてのアーティストが紅白出場を望んでいるわけではない。
「例えば、井上陽水さん(73才)は、『恥ずかしいから』といって、オファーを受けたことがありません。また、B’zも『年末は完全オフ』を貫き出ていない。若手ではONE OK ROCKのTakaさん(33才)が『紅白は田舎のおばあちゃんを喜ばせるためのもので、東京生まれのぼくにはそういう感覚がない。出る気持ちになれない』と打ち明けていました」(別の芸能関係者)
それでも、近年までは紅白出場のメリットは大きかった。元NHK職員でメディアアナリストの鈴木祐司さんはこう解説する。