「高校を卒業して、お笑い芸人になろうと宮崎から上京したんですが、数年間は事務所に所属するでもなくくすぶっていた時期がありました。その頃はなぜか必死に音楽を聴いていましたね。時間だけはあって、でもお金はなくて、好きだった音楽に逃避してたんです。
その頃出会った音楽には、本当に救われたし、受けた影響も大きかった。この本には、僕が日本テレビの情報番組の生放送中に俳優をビンタした事件はニルヴァーナのカート・コバーンの影響だった、なんて話も出てきます。僕の芸風はパンクだなんて言われることもありますが、自分がロックなものに心惹かれるのは一貫してるんですよね」
上京した永野が住んでいた高円寺の安アパートに、同じく宮崎から出てきた幼馴染が転がり込んできたエピソードも印象的だ。その幼馴染との記憶を鮮烈なものにしているのが、ニルヴァーナのアルバムというモチーフだったりもする。
「その幼馴染もずっと東京にいて、今でも東京で頑張ってるんですよね。数少ない友達です。僕、20代の頃や自分が売れてない頃は地元の宮崎にも友達はいたんですよ。中学時代の友達で、宮崎に帰ったときに飲んだり、僕がお金ないからおごってくれるような。でも、自分が売れてないことがどんどん嫌になってきて、おごってもらうのも恥ずかしくなってしまって、ちゃんと働いてる友達たちにだんだん会いたくなくなってしまった。
僕がラッセンで売れたとき、その幼馴染は嬉しいって言ってくれたんですよ。凄いね、って。でも地元の中学の友達とは、なんか変な感じになってしまったんです。こっちがブレイクしたら、今度は向こうが微妙な感情になってしまったのが伝わってきた。
言葉は悪いけど、僕のことをいつまでも夢見てていいねえ、よちよちいい子いい子って見ていたと思うんです。そうしたら、そんな奴がメジャーになったわけじゃないですか。そりゃあ如何ともし難い感情ですよね。僕が忙しそうにしてるのを見て、喜び反面、初めて味わう変な気持ちになったと思います。これ、誰も悪くない話なんです。ももクロと仕事するなんて誰も予想出来なかった事ですし」