豊田:私は、日本は「ゆでガエル」になるんじゃないかと。進行する危機に対応できず、気づいた時には茹で上がってしまっている。2007年にジュネーブの日本政府代表部に赴任した時、日本の国力と国際社会のプレゼンスはここまで低下したのかと衝撃を受けたが、その後も経済成長率や賃金、労働生産性などで世界の主要国から後れをとっている。国際社会で日本は文句を言わないしお金を出すから嫌われてはいないけど、残念ながらどの国からも「本当の仲間」とは思われていない。まずはこうした現実を客観視して、諸々の課題の解決策を考えていかなければと思う。
北京五輪の外交ボイコットにしても、香港・台湾、ワクチン外交など欧米と相容れない価値観に依拠しながら“中国の好きにやらせてたまるか”という思いがある。日本は盲目的に追従しなければならないわけではない。少なくとも“日本はこう思う。だからこうする”という態度をとらないと国際社会で軽んじられる。
寺脇:中曽根内閣の時に、明治以来の日本の教育制度は大成功したが、21世紀には耐えられなくなると臨時教育審査会をつくって教育改革をまとめた。その時われわれは「2020年の時を考えろ」と言われた。その時代がもう来ている。これからは30年、50年後を見据えて動かなければならないが、さっきも言ったように目の前に解決されていない問題がある。2022年の岸田政権はまず目に見える部分から先にやって、それから未来の話をする必要があると思う。
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【プロフィール】
寺脇研(てらわき・けん)/1952年生まれ、福岡県出身。1975年文部省(当時)に入省。広島県教育長、政策課長、大臣官房審議官、文化庁文化部長などを歴任、2006年退官。京都芸術大学客員教授、映画評論家、映画プロデューサー。
原英史(はら・えいじ)/1966年生まれ、東京都出身。1989年通商産業省(当時)に入省。内閣安全保障・危機管理室、行政改革担当大臣補佐官、国家公務員制度改革推進本部事務局などを経て2009年退官。政策工房社長、大阪府・市特別顧問。
豊田真由子(とよた・まゆこ)/1974年生まれ、千葉県出身。1997年厚生省(当時)に入省。2002年ハーバード大大学院修士。2007年在ジュネーブ国際機関日本政府代表部に赴任。2012年に自民党から出馬し、衆議院議員(2期)、文科大臣政務官などを務めた。
※週刊ポスト2022年1月14・21日号