「朝倉未来の物語」の周辺に広がる商圏

 朝倉未来のYouTubeチャンネルを見て欲しい。バナーにはチームのみんなが揃って写っている。彼らが、朝倉未来の不良時代の仲間であることは、チャンネル視聴者の間ではよく知られた事実である。そして、最近にいたっては、仲間のそれぞれが自分たちのチャンネルを持って稼ぐようになっている。おそらく朝倉未来がそう促したのだろうと僕は想像する。

 また、批判の多かったAbemaTVの企画「朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円」の挑戦者を次々と自身のYouTubeチャンネルに呼び寄せ、和やかなムードで歓談してもいる。これを“炎上”に対しての“火消し”対策だと解釈する向きもあろうが、僕はそうは取らない。なぜか。

 挑戦者のひとりは、参加した理由として、この先の自分の人生にはろくなことなどないのだからこれに賭けるのだ、と心情を吐露していた。彼は朝倉未来がそうなっていたかもしれない人物像である。もうひとりのタレントもいろんな事情があって人生がどん詰まっていた。この二人を挑戦者に選んだAbemaTVは、ヤバさの補強として、“どん詰まった危険なふたりが大金をせしめようと朝倉未来に牙を剥く”という物語を仕込んだわけである。

 ただ、ここで別の物語が生じた。朝倉未来は元はたしかに不良だったが、いまや大金を稼ぐ、いってみればエスタブリッシュメントである。どん詰まった者がエスタブリッシュメントにかかっていって、あっけなくボコられ病院送りされる。これが朝倉未来が読み取った「弱い者いじめ」だ。これでは「格闘技を盛り上げる」にはならないと判断したのだろう。

 朝倉未来がAbemaTVの挑戦者であり格闘家としてはアマチュアの二人を自分のYouTubeチャンネルに呼んだということは、朝倉未来の商圏に招き入れたということである。朝倉未来は彼らの挑戦を受ける時から、彼らをある種の仲間だと思っていた。だからこそ、弱い者いじめに見えたことが彼には応えたのである。僕はそう思う。

 さて大晦日の試合の後、RIZINを運営する会社の榊原信行代表は、クレベル・コイケという選手をふたたびRIZINのマットにあげることを宣言した。この選手は朝倉未来を失神KOさせ、同階級でもっとも強いという評判を取ったものの、榊原代表の逆鱗に触れ、わかりやすく言えばホサれていたのである。しかし、ここにきて榊原代表はクレベル・コイケを許した。この決断に、「もういちどクレベルと闘いたい」と朝倉未来がくりかえしコメントしたことは影響しているだろう。していないはずはない。なぜなら、朝倉未来の物語を中心にRIZINの商圏ができており、朝倉未来の物語にはクレベル・コイケという役者が欠かせないからである。

  

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