相撲協会は赤字50億円の苦境
また、維持員から否定的な声が出る背景には、「維持費の値上げ」もある。東京地区(国技館)の維持員は年3回本場所があるため、1年間の維持費が地方場所(23万円)の3倍となる69万円。6年契約となり原則として414万円を一括納入しなければならない。別の維持員が明かす。
「この維持費を、今年から値上げするという案内が届きました。1年間の維持費が135万円とほぼ倍額になるのです。値上げ幅として、常識の範囲を越えていないか。3場所45日分なので、1日あたり約1万5000円の値上げという計算になります。相撲協会が姑息だなと思ったのは6年契約を3年契約に変えていること。一括納入の総額が405万円となり、値上げの印象を薄めようとしていることが窺えます。
しかも6年契約を終えた維持員から順次再契約となっていくため、今回の値上げを知らない維持員も少なくない。値上げで溜席が広くなったわけでもなく、新たなサービスは専用ラウンジだけ。こんなに料金が上乗せされるなら、ラウンジなどいらないのではないか」
この「維持員専用ラウンジ」がQRコードなどウェブからの予約制ということについても、「古くからの維持員には高齢の人も多く、PCやスマホからの予約のやり方がわからないという声も聞く」(同前)と評判は今一つのよう。相撲協会の公式サイトにも維持費の値上げは告知されておらず、東京場所での1年間の維持費は69万円、6年間で414万円と明記されたままだ。値上げを知ったら「継続しない維持員も多くなるのでは」(協会関係者)という心配の声も聞かれる。
溜席に座るには、協会が発行する会員名が印刷された維持員券が必要となる。維持員が相撲競技に立ち合えない場合、代理立合者が認められているが、金銭による売買は禁止されている。
「とはいえ、初日、中日、千秋楽くらいは国技館に行けるが、15日間、皆勤で立ち合えるという維持員は少ない。知人などが代理人として立ち会うが、謝礼が発生するのが一般的。特にNHKの相撲中継に映る向正面は人気が高く、有名人などが座りたがる。そういった手配を専門にやっている関係者もいる。今後、契約を更新する前か後かで、値段の違う維持員券が2種類、流通するようになり、混乱が生じることになるのではないか」(若手親方)
コロナによる無観客開催などもあり、相撲協会は2020年度の決算で過去最大の50億2600万円の赤字を出している。そうした苦境も値上げの背景にあるのだろうが、維持員がどこまでの負担を納得するのか。議論はこれから広がっていきそうだ。