2020年に新型コロナウイルスが都市部を中心に感染拡大した時も、東京や大阪などから地方に帰省してきただけの人たちにむかって「コロナがうつる」と非難したり、県外ナンバーの乗用車に警告を勝手に貼るなど、極端な言動を隠そうとしなくなる人たちがいた。いまだにその感覚から抜けきらない人たちなのだろうか、ネット上で激しく議論……というより、醜い「言い争い」を続けていた人たちによって、克服したはずのかつての光景が甦ったかのようだった。
「みなさん、子供のためを思ってのことだとは思います。ですが、その言い争いを、子供たちを前にしてもできるのか、ということです。親達がこんな有り様では、大会が開催となり試合にのぞんでも変なシコリが残りそうです。大人達に振り回される子供達がとにかく不憫です」(齋藤さん)
コロナを言い訳にして、直面している困難の種類が違うチームと自分の子供のチームを比べ、●●は自分たちより練習出来ているはずで卑怯だ、■■は試合に出られるからずるいと言い募る。自粛するべきと主張する側も、通常通りの活動を望む側も、似たような不満を表出している。そんな言葉の奥底には、子供たちのためだと口にしながら、自分の気が済むようにしたいという親のエゴが見えているとしか思えない。だが、その歪さになかなか気づけないものだ。
みなさん、無責任だとしか思えない
いくらSNSなどで言葉を吐き出したところで、第6波に翻弄されている人たちの気持ちは晴れない。そのため親達は、今度は子供たちが参加予定の大会主催者や学校関係者、そして実際に指導の現場をまかされている教員へと鬱憤晴らしの言動が向けられる。南関東エリアの小学校教員で、バスケットボールクラブコーチの大坂慎吾さん(仮名・30代)は頭を抱える。
「私の学校は比較的感染者数が多いエリアにあり、年明けすぐに、うちの学校と近隣学校の数カ所の会場で大会が開催される予定でした」(大坂さん)
ところが年明け以降、大会に参加予定の別チームの保護者から、複数の問い合わせが入った。それは、大坂さんが勤務する学校がある場所で試合をするのはけしからん、中止すべきというものだった。そしてやはり「感染者数が多いので出場を辞退しろ」という脅迫めいた圧力だった。
「お子さんを心配する気持ちだとは察しますが、感染者数が多いところに住んでいるのだから自粛しろ、はあまりに横暴すぎます。しかし、そういった意見が多く無視できないと判断され、大会そのものの中止や延期を検討することになりました。すると今度は、なぜ開催しない、オミクロン株なんか風邪と同じなのに、という意見が相次いで寄せられたのです。結局、大会は延期になりましたが、どちらにせよ、批判されるのは私たち。正直、みなさん無責任だとしか思えません」(大坂さん)