「真菜は僕にないところ、いいところを全て持っている。真菜からしたら『いや、私のないところをタクは全部持ってる』と言ってくれていたんですけど。僕は真菜のような愛情深い人間ではなかったし、彼女の生き様、その愛を無駄にしたくないんです」

「真菜は僕にないところ、いいところを全て持っている。真菜からしたら『いや、私のないところをタクは全部持ってる』と言ってくれていたんですけど。僕は真菜のような愛情深い人間ではなかったし、彼女の生き様、その愛を無駄にしたくないんです」

 事故後、交通事故を防ぐための活動を行ってきた松永さんは、誹謗中傷や民事裁判の二次被害についても訴えている。

「自分が体験した苦しみや悲しさを他の人に味わってほしくないんです。味わうべきじゃないと思う。体験したからわかるんですよ。こんなことは起きてほしくない」

 その思いは「ふたりの命を無駄にしない」と真菜さんと莉子さんの遺体に約束したときから変わらない。

「莉子は記憶力がめちゃくちゃよくて、ここにある絵本、ほとんど覚えて音読してました。ことわざかるたを買って1週間くらいたった時、僕が仕事から帰ったら真菜が『莉子が全部覚えた!』って興奮してるんです。『そんなわけないじゃん』って信じなかったら『じゃあ試しにやってみて』と言うので『じゃあ莉子ちゃん、ふくろの・・・・・・?』って聞くと、『ねずみ』。『やまいは・・・・・・?』『きから』って。驚きました」

「莉子は記憶力がめちゃくちゃよくて、ここにある絵本、ほとんど覚えて音読してました。ことわざかるたを買って1週間くらいたった時、僕が仕事から帰ったら真菜が『莉子が全部覚えた!』って興奮してるんです。『そんなわけないじゃん』って信じなかったら『じゃあ試しにやってみて』と言うので『じゃあ莉子ちゃん、ふくろの・・・・・・?』って聞くと、『ねずみ』。『やまいは・・・・・・?』『きから』って。驚きました」

「真菜と莉子の遺体が家に帰ってきて葬儀までの5日間、もう生きる意味もないしどうやって死のうか考えていたんですよ。

 でも、ずっと眠れない夜に、ふたりと手をつないでいたらふと、『そんなこと望むわけないよな』と。もし逆の立場だったら、僕はふたりに生きていてほしいと思うだろうし、僕が死ぬことをふたりは望んでいないだろうな、と思ったんです」

 では、どうすればいいのだろう、真菜さんと莉子さんが全てだった自分はこれから何を糧に生きていけばいいんだろう、と考えたとき、「何か行動をすれば生きる力になるんじゃないか。結果、ふたりの命を無駄にしなかったと言えるんじゃないか」と思い至った。

 そして決意を固め、最初の会見を行ったのは事故から5日後だった。もともと松永さんは、自分から前に出るタイプではなかったという。

「あえて真菜と莉子の顔写真を公開したのは、この苦しさとか悲しさを現実として感じてもらえれば。そして気をつけようって思ってくれる人がいて、事故が少しでも防げるんじゃないかって考えたからです」

 実際には交通事故はもっと複雑で、意識だけでは防げないこともわかってきた。

「真菜と出会うまで、自分本位だったと思うし、昔は交通事故のニュースを見ても、『かわいそうだな』『残された人は辛いだろうな』で終わっていたんですよ。心のどこかで『自分は被害に遭わない』って思っていたんでしょう。

 だから僕はあえて、交通事故の現実を全部見せています。泣いたり苦しんだりすることも、全くの赤の他人だったのに恨まなきゃいけないことも、こうやって幸せな生活を送っていた部屋を片づけなければいけないことも、刑事裁判が終わってもまだ苦しみが続くことも・・・・・・。

 なぜこうなっているかと言ったら、交通事故が起きてしまったからなんですよ」

 警察庁の発表によると、2021年1月~12月の交通事故死者数は2,636人。負傷者数は361,768人になる。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト