夫婦ともども健康なので、死や病気について語り合うようなことはせず、「お互いそう長くはないから、気楽にやっていこう」と話しています。せっかく健康なのに死や病気のことを考えて、余計な心配をするのは身体に悪いですからね。

 この歳になると認知症になる可能性もあるので、ボケ防止のためにゲームや読書をして脳トレにも励んでいます。認知症をすごく恐れているわけではないけれど、仮に自分が認知症を発症したら、進行させないよう意地になり、いろんな治療法にトライするでしょうね。目の前の苦難に抗ってこその人生なので、毎日毎日、自分との戦いを繰り返すはずです。

 とはいえ私自身、人生にやり残したことや悔いはありません。ここまで来たら、「ちょっと昼寝でもしてくるわ。失礼します」と家族に伝えてそっと目を閉じ、健康なまま寝入るように死んでしまうのが理想です。

 逆にどうしても避けたいのが、周りに迷惑をかけながら生き永らえることです。それは私にとって「人生最大の屈辱」です。だからこそ、不測の事態が生じてある日突然、自分が寝たきりになってしまったら、安楽死することを本気で望みます。

 この先、日本で安楽死が議論されるようになり、安楽死を可能にする法案が国会に提出されても、日本の風土からして法案成立が難しいことはわかっています。それでも私は、安楽死を法制化してほしいと望む考えです。人生120年時代、寝たきりになって妻や娘に迷惑をかける前に、自分の人生の幕を閉じる主導権を握りたいと心から願っています。

※週刊ポスト2022年4月29日号

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