(時事通信フォト)

巨大地震は30年以内に発生すると予想されている(時事通信フォト)

 東京、名古屋、大阪……主要都市が軒並みまひした日本は災害救援のシステムがほとんど機能しない。下水の逆流などによる感染症が蔓延しながらも医療の手はさしのべられず、長期間にわたる孤立状態が続いた〉

 スーパー南海地震で想定される被害について、立命館大学環太平洋文明研究センター特任教授の高橋学さんが指摘する。

「東日本大震災の際、津波で亡くなった人は被災自治体の一部では人口の9%に達しました。スーパー南海地震の想定地域である東京から沖縄のエリアに当てはめると、津波での死者は最小でも47万人、地震の犠牲者を含めると50万人以上もの命が失われる可能性があると考えています」

 なんとも恐ろしい情景だが、これが現実のものとして私たちの前に立ちはだかる可能性は、かなり高いようだ。

 さらに恐ろしい地震も想定される。首都直下地震だ。活断層によるもので、政府は最悪の場合、約2万3000人の死者と95兆円の経済的損失が出ると算出している。京都大学名誉教授で地球科学者の鎌田浩毅さんはいう。

「9世紀、貞観地震(M8.3)が東北を襲った9年後に神奈川県の伊勢原断層により相模・武蔵地震が起きた。さらにその9年後には、なんと南海トラフ地震が続いている。つまり、1000年前には東日本大震災の後、南海トラフ地震が起きる前に首都直下地震が起きたわけです。

 直下地震は予測が難しく、どこで起きるかわからない。3500万人の人口がある首都圏で起きれば地震とともに火災が心配。1923年の関東大震災では死者10万人の9割が火災によるものでした」(鎌田さん)

 東京都は4月〜5月までに、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに改定すると発表。これまでの想定は東京湾北部地震を対象としていたが、公表予定の新たな被害想定では港区や品川区の直下を震源とする都心南部直下地震を想定したものとなる。建物の耐震化が進み街の安全性が高まった一方、都心の人口が増えて高齢化や単身世帯化が進んでいることを踏まえて震災関連死が増加しないよう避難生活も重視する方針だという。

 それ以外にも懸念が残る地震がある。神戸大学都市安全研究センター教授の吉岡祥一さんが指摘する。

「千島海溝・日本海溝は太平洋プレートが、その上に載っている北アメリカプレートを引きずり込んで沈んでいく部分。千島海溝では最大M9.3の地震が想定され、経済的被害は31兆円とされています。日本海溝では最大M9.1の地震が想定されており、経済的被害は17兆円といわれています」

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