少子化対策の4類型
世界各国の少子化対策は、大きく分けて4つの類型があります。まず、そもそも「少子化が起きなかった国」というのがあります。アメリカ、イギリス、オーストラリアなどがその例です。こうした国々は、出生率の低下などがほとんどなく、移民の流入によって人口が増加しています。基本的に、家族政策には不介入で、移民が子供をたくさん産んでくれるという状況です。
たとえば、オーストラリアはかつて「白豪主義」と呼ばれた白人を優先する政策のもとで移民を入れなかった時代には、総人口が1600万人ほどでした。今は3000万人近いですが、人口が増えた要因は、外国から来た移民がさらに子供を産んでいることが大きいと思います。そのため、オーストラリアのGDPの推移を見ると、途上国と同じような形をしています。そういう状況にある国が、この1番目の類型です。
2番目は「少子化が起きたが、政策によって転換した国」で、フランス、スウェーデン、オランダ、ハンガリーなどがそれに相当します。これらの国では、仕事と育児の「両立支援」によって出生率を回復させることを主目的として、それを実行に移しています。日本政府も、これらの国を少子化対策のモデルにしていると言っていますが、私が知る限り、これらの国の少子化対策のレベルには遠く及びません。
3番目には、「少子化が起きたものの、移民でしのいでいる国」です。これらの代表的な例は、ドイツ、イタリア、スペイン、カナダといった国々です。これらの国では、出生率が低下したにもかかわらず、少子化対策がほとんど行なわれずに、移民・難民を受け入れて、結果的にその人たちに人口増加を手伝ってもらう格好になりました。
そして、4番目の「少子化が起きて現在も進行している国」には、アジアの日本、中国、韓国、台湾、タイなどが入ります。これらの国では、少子化対策が効果を上げておらず、移民の受け入れなども進んでいません。この現実に、もっと危機感を持つべきだと思います。
※大前研一『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館)より一部抜粋・再構成