医療から警察・自衛隊の質の低下も
この少子化がもたらす影響というのは、まず経済的な影響としては国内市場が小さくなる、つまり“胃袋”が小さくなるということが挙げられます。それから労働供給、働き手が減少します。さらに、社会保障の負担をしなくてはいけない現役世代が減って、代わりに高齢者が増えるので、現役世代の負担が非常に増えます。
そして、経済成長率は当然低下して、税収も減少しますから、国債の乱発、ハイパーインフレのリスクが高まる──という道を歩むことになります。国債を出すのは、人口ボーナス(高齢者や子供よりも生産人口が多い状態)があった時代、つまり田中角栄さんの頃は、将来働く人は増えますから、多少借金してもよかったのですが、今は人口オーナス(人口ボーナスの対義語)の時代で、働く人が減るという時期に、国債を乱発すれば、これを返す人がいなくなってしまいます。
次に社会的な影響としては、いわゆる「消滅可能性都市」が増えていきます。これは2014年に日本創成会議(増田寛也座長)が提言したもので、年齢が39歳以下の若年女性人口が減少し続けている市区町村は子供が増えないので、将来は消えてしまうということで、2040年までに全国1800の市区町村のうち半分は消滅する可能性が高いという凄まじいレポートを書きました。これがますます深刻化するということです。
それから、高齢化率の上昇で地域社会の活力が低下します。さらに、児童数が減少して、学校の統廃合を余儀なくされます。
そして、医療、警察・消防、自衛隊などを含めて、行政サービスの水準が当然下がります。また、社会インフラの維持・更新が困難になります。
これは新刊『経済参謀』でもたびたび強調したことですが、人口が減少するということは、経済的・社会的に考えて、日本の国力が低下するということであり、国家の継続が危うくなる極めて深刻な問題だということです。