「人間の力ってすごいなと思いますね。コミュニケーション不全な世の中だけど、今回の作品を通して、やっぱりそれじゃダメなんだと痛感しました。ひとりではできないことや越えられないことだらけなんですから。問題はどうやって若い世代の人たちに伝えたらいいのかということなんですけど、これは非常に難しいと思います。
教師の役をやって、教育の現場で一人ひとり性格や環境の違う生徒とそれぞれに応じた距離感を測りながら向き合うというのは至難の業だな、と。でもエンターテインメントの力をもってすれば、若い人たちの心を動かせるのではないかと期待してます。
『20歳のソウル』という映画を観た人が、自分も人を大切にしよう、絆について考えてみようと思ってくれたら、役者冥利に尽きるというものです」
大義役を演じた神尾楓珠や、佐野晶哉をはじめとする若い役者たちとのコミュニケーションは、どのように図っていたのだろうか?
「ええ、普通に。礼儀正しくて、話していても気持ちがいいです。若い人たちのためにできることは、やってみせて足元を照らしてやることぐらいかな。絡みのシーンでは何かを感じとってほしいという気持ちで向き合っていました。ぼくに限らず、脇を固めているのは平泉成さん、高橋克典さん、石黒賢さん、尾野真千子さんといった、ベテラン役者ばかりですから。若い役者さんたちにとって、刺激的な現場だったのではないでしょうか。
この映画のテーマでもありますが、今日という日を大切にしなくてはいけませんね。誰だって明日があるという保証はないんですから。ぼくにしても、周囲の人を敬い、やりたいことがあればやって、悔いのないように生きていきたいと思っています」
(第4回につづく)
【プロフィール】
佐藤浩市(さとう・こういち)/1960年東京都出身。1980年ドラマ『続・続事件〜月の景色〜』でデビュー。 今年は映画『20歳のソウル』(5月27日公開)のほか、映画『MIRRORLIAR FILMS Season2』内の三島有紀子監督作品『インペリアル大阪堂島出入橋』(公開日未定)、『キングダム2』(7月15日公開予定)、2023年は『仕掛人・藤枝梅安』(4月7日公開予定)も控える。
取材・文/丸山あかね 撮影/森浩司
※女性セブン2022年5月26日号