仮にアデノウイルスが何らかの形で肝炎を引き起こしているとしたら、6月以降、日本でも、この子供の肝炎の“パンデミック”が起こるかもしれない。というのも、現在、各国で確認されている「F種41型」というアデノウイルスは、国立感染症研究所のデータによると、コロナ禍以前の日本では6月に最も多くの感染例が報告されていたからだ。
その理由の1つが子供たちが待ち望んでいるプールの授業である。
「塩素による消毒が不充分な場合、プールの水を介してアデノウイルスの流行が広がることも多い。『プール熱』と呼ばれているのはそのためであり、例年、6月から夏にかけて子供を中心に感染が広がることが知られています。新型コロナの影響で中止していたプールの授業を今年から再開する学校が多いため、一気に感染が広がる可能性があるでしょう」
また、6月には海外からの入国者数の上限が1日1万人から2万人に引き上げられることも見逃せない。変異したアデノウイルスが原因の場合、新型コロナのように国内に流入し、爆発的に広がる可能性もあるのだ。
現状では、原因不明の肝炎は子供のみに広がっているが、アデノウイルスが子供を媒介にして大人に感染してしまうことも考えられる。幅広い世代で感染対策を取る必要がある。
「アデノウイルスは、主に接触感染と飛沫感染によって広がっていきます。こまめに手を洗い、マスクをつけるなど、これまでどおりの基本的な感染対策を丁寧に行うことが重要です」
また、重症化させないためには早期発見がカギとなる。
「便の色に異常がないか子供に報告させたり、食欲不振や倦怠感、嘔吐などの体調不良があれば、早めに病院に連れていきましょう。白目が黄色っぽく変色していないか、よく見ておくのも有効です」(前出・田尻さん)
マスクの屋外不要論も出てきているが、新たな脅威が迫りつつあるいま、油断はできない。身近にいる子供のためにも、細心の注意を払いたい。
※女性セブン2022年6月2日号