ライフ

人手が足りないはずなのに、最低時給に近い額で募集が続けられるのはなぜか

経済財政諮問会議・新しい資本主義実現会議の合同会議で発言する岸田文雄首相(右から2人目、時事通信フォト)

経済財政諮問会議・新しい資本主義実現会議の合同会議で発言に臨む岸田文雄首相(右から2人目、時事通信フォト)

 政府の「新しい資本主義の実行計画」によれば、2025年度には全国平均の最低賃金1000円以上を目指す方針だ。政権発足時に岸田首相が掲げた「令和版所得倍増計画」は、約半世紀前の所得倍増計画とは異なり、個人の資産所得、つまり株式や投資信託などから得られる所得を倍増させるものだったため、多くの国民にとって所得は倍増しないと受け取られていたことに対するフォローなのだろうか。最低賃金の上昇によって、閉塞感に満ちた庶民の経済状況を改善できるのだろうか。俳人で著作家の日野百草氏が、学生からの素朴な疑問をきっかけに、日本の最低賃金とは何を示しているのかについて考えた。

 * * *
「最低時給なのに、どうして最低が標準みたいに下に合わせてるとこが多いんですかね、あくまで最低時給で、上限はないはずなのに」

 筆者の元教え子の学生、コロナ禍にも恵まれたアルバイト先で仕事を続け、来年はいよいよ社会人である。いつも素直で素朴な問いかけをしてくる彼、この疑問も一笑に付すには侮り難く、なかなか深い。

「多くは最低時給と書いて、まず最低時給かそのちょっと上からスタートですよね。経験者でもまずそこから、ってところもあります。以前、同じようにバイトしてる留学生とも不思議な国だねと話したんです」

 未経験なら最低時給かそれに準じる額というのも仕方のない話、しかし経験者でもそこから「とりあえず」スタートというのは多くの方が経験している通りに多い。全国の最低時給、最高額は東京で1041円、最低額は高知と沖縄で820円だが、実際は820円台を最低ランクとするなら青森(822円)、岩手(821円)、秋田(822円)、山形(822円)、鳥取(821円)、島根(824円)、徳島(824円)、愛媛(821円)、佐賀(821円)、長崎(821円)、熊本(821円)、大分(822円)、宮崎(821円)、鹿児島(821円)と並ぶ(すべて2021年10月時点、産業別最低賃金は除く)。別にこの金額を下回らなければいいとはいえ、こうした東北、中国四国や九州の一部ではほぼこの最低時給かそれに近い額で募集がかけられている。仕事がないと言われる地方とはいえ、募集しているということは人が欲しいはずなのに、まるで賃金が上がらない。

「経験のあるなしもそうですけど、切羽詰まるくらい人手が足りないところも最低時給に近い額で募集してますよね。その時給で人が来てくれないなら時給を上げて募集するのは当たり前の気がするのですが、なぜ最低時給で募集し続けるのでしょう、いますぐ人が欲しいはずですよね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン