天安門事件の様子(写真/AFP=時事)

天安門事件の様子(写真/AFP=時事)

父子の異なる対応

 にもかかわらず、習はロシア寄りの方針を崩していない。習はなぜこれほど、プーチンをかばうのだろうか。二代にわたり習の一家と交流がある中国共産党関係者が、その背景を読み解く。

「『プーチン政権の維持』こそが、死守しなければならない命題なのだ。習氏は内部会合で『中国をソ連にしてはならない。私は絶対にゴルバチョフ(当時のソ連大統領)にはならない』と強調している。ウクライナの失敗がきっかけとなって、プーチン政権の崩壊につながることは絶対に避けたいのだ」

 社会主義国だったハンガリーやポーランドなどで1988年から起こった民主化を求める東欧革命は、中国共産党を震撼させた。この流れは中国にも飛び火し、翌1989年6月の天安門事件が起きた。他の社会主義国が崩壊していくなか、天安門事件で民主化を求める学生らを武力で弾圧した中国指導部について、習は2021年11月の演説でこう評した。

「世界の社会主義は重大な挫折に直面したが、党は断固とした措置で、国の存亡がかかった闘争に打ち勝った。あの時の『ドミノ倒し』のような変化のなかで中国共産党による統治が崩れていれば、社会主義という実践は暗闇のなかでさまよっていただろう」

 その死が天安門事件の引き金となった改革派の元総書記、胡耀邦を最後まで擁護したのが、習仲勲だった。天安門広場に集まった学生らに同情を寄せ、政治改革にも最後まで執念を燃やしていた。

 この時、息子の習近平は福建省の地方政府幹部だった。事件にどのように対応したのだろうか。前出の中国共産党関係者が振り返る。

「父親とは真反対の措置をとっている。隣接する浙江省から福建省に入って来ようとした学生らを阻止するように指示していた。デモ参加者を徹底的に取り締まるように厳命していた」

 中国共産党にとっての最大の危機における父子の異なる対応が、その後のそれぞれの政治人生を決定づけることとなる。

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