巨人人気の衰えを補う“発信力”
中畑氏のもう1つの魅力は発信力だ。当時の横浜DeNAは人気、実力ともに低迷していた。しかし、中畑監督が就任すると、オフのスポーツ紙1面を何度も飾った。キャンプ1日目にはインフルエンザに感染して大きな話題に。その人気は一過性ではなく、監督時代ずっと続いた。実は、最近の巨人は人気面でも衰えを見せている。
「閑古鳥の泣いていた横浜スタジアムは、中畑監督就任とともに観客数が増加していき、最後の2015年には最下位にもかかわらず、実数発表後最高の観客動員を達成するなど人気の高いチームを作りました。横浜ファンは筒香や梶谷などの若手が成長していく楽しみを味わえたし、2013年には7点差を逆転勝ちする試合が3度もあった。中畑監督は、ファンが球場に来たくなるチームを作り、ファンに愛されていた。
巨人は2019年から連覇したのに、その2年間、観客動員数の面で阪神の後塵を拝した。昨年はリーグ1位に返り咲きましたが、今年はまた阪神がトップです。巨人にはもう以前のような人気がない。かつてのように黙っていてもファンが来てくれる時代ではありません。そうした中で中畑氏の発信力は大きな武器になりますよ」
そうは言っても、監督として一度もAクラス経験のない中畑氏を“常勝・巨人”に呼ぶとなれば、否定的に捉えるファンもいるだろう。
「DeNA時代はバントを多用し、中継ぎも同じ投手にこだわり何試合も使うなど、起用法に疑問符がつくこともあった。“昭和のプロ野球”の采配の名残があったように思います。ただ、当時のDeNAはコーチにお金をかけないチームで、信頼できる人材も少なかった。巨人はそんなことはしない。名参謀がいれば、DeNAとは違う結果になりますよ。また、これからの巨人を常勝チームにするには、誰がなっても相当困難です。この30年近くだって、FA制がなければ、こんなに優勝はできなかったでしょう」
巨人は他球団で監督を務めた人物を呼び戻した例がない。
「前例にこだわる体質を改めない限り、巨人は変われません。長嶋茂雄、王貞治の後を継いで7年間で4度の優勝、2度の日本一に輝いた藤田元司監督は大洋の投手コーチを務めてから巨人に戻ってきた。他球団での経験は巨人の良さを知ることにもなるし、プラスになることはあっても、マイナスになることはないですよ。現時点では中畑監督の誕生は『大穴』かもしれませんが、後半戦の戦い方次第では何が起こるかわかりません」
首位・ヤクルトに13ゲーム差をつけられ、優勝は絶望的の巨人。もしBクラスでも原監督続投となれば、ファンが黙っていないのではないか。