国内

総工費10兆円の「日韓トンネル」構想 技術的には可能でも必要とは思えない

青函トンネルの本坑が貫通し、酒樽神輿を担いで祝う工事関係者。1985年3月10日(時事通信フォト)

青函トンネルの本坑が貫通し、酒樽神輿を担いで祝う工事関係者。1985年3月10日(時事通信フォト)

 約40年前に着工したものの停滞している大プロジェクト「日韓トンネル」は、総工費が約10兆円と言われている。1961年に建設開始し1988年に開通した青函トンネルの建設費が7455億円かかったことを思うと、いかに大規模なものかが分かるというものだ。俳人で著作家の日野百草氏が、旧統一教会との接点によっていま注目を集めている日韓トンネル実現の可能性について聞いた。

 * * *
「日韓トンネルですか。調べてみましたけど、日本の技術なら可能です。でも、何もメリットはないでしょう」

 海洋土木に強みのある中堅建設会社の施工管理技士が語る。こういった内容では学者より海洋土木の現場を知る技術者のほうが、経験に裏打ちされた肌感など有意に思う。ちなみに本稿、専門用語や業界特有の言い回しなどは適時置き換えている。ヒアリングの本旨はあくまで「日韓トンネルは実現可能か、必要か」という点にある。

 日韓トンネルとは日本の佐賀県唐津市から壱岐、対馬を経て韓国の釜山まで海底トンネルでつなぐとされる壮大な計画である。その全容は全長270km、海底距離150km、最大水深170m、予定工費10兆円(諸説あり)とされる巨大プロジェクトであり、今年6月にも「日韓トンネル実現九州連絡協議会」を中心に総会が開かれるなど再び脚光を浴びている。

 1980年ごろから計画されていまだに実現を見ないこの計画だが、宮崎県知事に再出馬する予定のタレントで元衆議院議員、東国原英夫も前知事時代の2010年、この日韓トンネルを「僕個人の夢物語」として中国メディア「サーチナ」に熱く語るなど(実際に通るのは佐賀県なのだが……)、当時は九州の政財界を中心に一定の支持を集めていた(今は「反対の立場」と8月25日に釈明)。

 一方、韓国側でも世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会などを中心として日韓トンネル実現のために資金を集め、関連団体による試掘をおこなったとされる。2008年に自民党の衛藤征士郎(日韓議員連盟)や民主党(当時)の鳩山由紀夫らを発起人とした日韓海底トンネル推進議員連盟が立ち上がり、韓国側にも日韓トンネル研究会(日本にも同名の研究会はある)という旧統一教会による事業団体がある。

 こうした熱心な方々には申し訳ないが正直、筆者の感想としては荒唐無稽としか思えない。しかし日本の技術なら可能、とはどういうことか。

「日本の海洋土木は世界でもトップレベルです。青函トンネルの時代からずっとそうです」

 青函トンネルの開通はよく覚えている。小学生のころ、建築関係の仕事をしていた父に連れられて『海峡』という映画を観た。全体的に冗長なのはともかく、最後の貫通では素直に喜んだ。時を経て1988年3月に青函トンネルが開通、本当にやったんだな、日本は凄いなと思った。

関連記事

トピックス

お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバー・斉藤慎二。9ヶ月ぶりにメディアに口を開いた
【休養前よりも太ってしまった】元ジャンポケ斉藤慎二を独占直撃「自分と関わるとマイナスになる…」「休みが長かった」など本音を吐露
NEWSポストセブン
約40年、地元で愛された店がラーメンをやめる(写真提供/イメージマート)
《SNS投稿やグルメサイトの弊害》あっという間に人気飲食店になったことを嘆く店の人たち 問い合わせが殺到した中華料理店は電話を撤去、行列ができたラーメン店は閉店を決めた 
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《TOKIO解散後の生活》国分太一「後輩と割り勘」「レシート一枚から保管」の節約志向 活動休止後も安泰の“5億円豪邸”
NEWSポストセブン
大谷翔平の新投球スタイルを分析(Getty Images)
《二刀流復活》進化する“投手・大谷翔平” 「ノーワインドアップ」と「シンカーボーラーへの移行」の新スタイルを分析
週刊ポスト
中山美穂さんをスカウトした所属事務所「ビッグアップル」創設社長の山中則男氏が思いを綴る
《中山美穂さん14歳時の「スケジュール帳」を発見》“芸能界の父”が激白 一夜にしてトップアイドルとなった「1985年の手帳」に直筆で記された家族メモ
NEWSポストセブン
結婚式は6月26日に始まり3日間行われた(時事通信フォト)
《総額72億円》Amazon創始者ジェフ・ベゾス氏の豪華結婚式、開催地ベネチア住人は「億万長者の遊び場に…」と反発も「朝食17万円、プライベートジェット100機貸し切り」で市長は歓迎
NEWSポストセブン
藤川監督(左)の直訴を金田氏(右)が存命であればどう評したか
阪神・藤川球児監督の「練習着にハーフパンツ着用」直訴で思い出される400勝投手・金田正一さんの言葉「大投手になりたければふくらはぎを冷やしたらアカン」
NEWSポストセブン
「札幌のギャグ男」公式インスタグラムより
《特別支援学級編入を決断した当事者の声》「小3の知能で止まっている」と宣告された中学1年生が抱えた“複雑な思い”「母さんを楽にしてやれるって思ったんだ」
NEWSポストセブン
STARTO ENTERTAINMENTの取締役CMOを退任することがわかった井ノ原快彦
《STARTO社取締役を退任》井ノ原快彦、国分太一の“コンプラ違反”に悲しみ…ジャニー喜多川氏の「家族葬」では一緒に司会
NEWSポストセブン
仲睦まじげにラブホテルへ入っていく鹿田松男・大阪府議(左)と女性
石破“側近”大阪府連幹部の府議、本会議前に“軽自動車で45分ラブホ不倫” 直撃には「知らん」「僕と違う」の一点張り
週刊ポスト
国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている(時事通信フォト)
「国政に再挑戦する意志に変わりはございません」山尾志桜里氏が国民民主と“怒りの完全決別”《榛葉幹事長からの政策顧問就任打診は「お断り申し上げました」》
NEWSポストセブン
中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト