レースに使うのを我慢して変わってくるのを待つこともある。レースに使ってほしいという要望はありますが、そうするとよくないと思えば、根気よく説明していくしかないです。全部思い通りになっていたら、みんなオープン馬ですよ。もちろんよくなってほしいのですが、馬は生き物だから、すべて人間の思う通りにはならない。誤解を恐れずに言えば、それが頼もしいことでもあるし、楽しいことでもある。
それでも8月21日には騎手時代ディーマジェスティなどでお世話になっていた嶋田賢オーナーのインスタキングが2歳馬として初勝利。またディープインパクト産駒のジュエルラビシアも最終週の3歳未勝利戦をなんとか勝ってくれました。
ジョッキーの時は自分の騎乗馬に限らず、過去のレースを何度も見てシミュレーションしたけれど、馬の「今」が気になって時間がいくらあっても足りない。毎日馬房の前に立って「どうだい?」って声をかけています。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2022年9月30日号