まず一つ目は、現在公開中の香取慎吾・主演映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』の監督・市井昌秀さんが話していたことだ。

「香取さんは台本を覚えてこないんです。朝、移動の車だったり、リハーサルや照明のセッティングをしている間に最終的にカチっと覚える、と。

 セットに触ったり、相手役との距離やそういったものを感じながら、その場で完全に覚えていったりするようなんです」

 香取いわく、「自分が演技やセリフを固めてきて、いざ監督や演出家の指示と違うとなったら柔軟に動けないから、固めてこないほうがいい」。これは監督の立場からしたら、とてもありがたい理に適った考え方だという。

 役どころやシーンの意図さえ掴んでおけば、セリフは本番の直前に完全に入る、そんな即興性にも対応できる香取のスタイルを市井監督は絶賛していた。

「コロナ禍の中、エンタメもどんどん形を変えていっている中、有観客でお客さまに来ていただけることが幸せだと思います」と香取。

「コロナ禍の中、エンタメもどんどん形を変えていっている中、有観客でお客さまに来ていただけることが幸せだと思います」と香取。

 そして、二つ目は、今から18年前に放送されたNHK大河ドラマ『新選組!』で、香取が主演の近藤勇を演じていた時。大河ドラマの撮影スタジオに取材で訪れ、たまたま目にした光景だ。

「おはようございます」と、原色柄のスウェット姿で控え室にやって来た主演・近藤勇役の香取。メイクルームで髪を整え、着付けをして近藤勇になっていく間、ずっと台本を手にしている。

 その傍らでは『新選組!』の脚本を手がけた三谷幸喜さんが、その日撮影するシーンの状況、登場人物の関係性などを説明しているのだ。

 現場で準備をしながらセリフを覚え、セットに入れば完璧に堂々と演じてしまう集中力、常人ではない! とものすごく印象に残っている。当時は超多忙なスケジュールを縫っての撮影だからかと思っていたが、その頃から香取のスタイルは作られていたのかもしれない。

 舞台『burst!~危険なふたり~』は7年ぶりの再演になる。コロナ禍を経て、三谷幸喜、草なぎ剛、香取慎吾というエンタメの世界をけん引する3人が久々にタッグを組むスリリングな競演は、今回も大きな話題を呼ぶはずだ。

舞台『burst!~危険なふたり~』10月26日まで日本青年館ホールで公演中。

舞台『burst!~危険なふたり~』10月26日まで日本青年館ホールで公演中。

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