欧米ホラーに“子供”が登場したら、その作品のテーマは“悪魔”
『エクソシスト』や『オーメン』に共通するもの。それは「悪魔」の存在だ。
「日本では家や人に取り憑くのは幽霊ですが、欧米では悪魔が多い。宗教観が違う日本人にはピンとこないことが多いのですが、欧米では悪魔は何より恐れられる存在です。ホラー映画でも無垢で純粋な子供が恐ろしいことを口にしたり、暴力的に豹変すると、たいていは悪魔が取り憑いていることになっている。それはエンターテインメントとしての倫理的観点からも、子供を邪悪に描いただけでは一般的に満足されず、消化不良になってしまうからです」
ホラー作品の舞台に村や病院、学校が多いのはなぜか?
横溝正史原作の『八つ墓村』(1977年)や、清水さんの監督作品『犬鳴村』(2020年)など、恐怖を煽る設定として田舎が舞台に使われることが多い。
「欧米でも、小さな集落が舞台になることは多々ありますが、村は狭い世界で集団心理に追い込まれやすい状況にある。だからこそ、カルト的なものが生まれやすいし、特に島国の狭い視野で生きている日本人には、そこに恐怖を見出しやすいんです」
廃墟となった病院(特に精神病院)や学校もホラーに欠かせない。
「それ以外にも捨て置かれた誰もいない建物や場所は、どこでもホラーにはよく使われます。これらは無人になっても、人の気配を感じやすい。廃墟となった病院でも、個人情報が書かれたカルテや注射針がそのまま置いてあるところが実在しますし、放置されたまま出ていくなんて、どんな事情があったんだろう、と。かつての医師や看護師、患者さんの身に何があって、いまはどうしているのか、過去を思う寂しさとともに恐ろしい事情があったのではと想像に訴えかけてくるからです。学校も同様です。教室の机や椅子がそのままだと、かつて活気があった気配だけを感じてしまう。勝手に想像できて、勝手に怖がらせることができる場所はホラーに欠かせません」