笑顔で斉藤宜之(右)に声をかける原辰徳監督(2006年。時事通信フォト)

笑顔で斉藤宜之(右)に声をかける原辰徳監督(2006年。時事通信フォト)

巧い選手ではなく強い選手が欲しい

「レギュラーの清原和博を何度も故障で欠きながら、斉藤宜之などを抜擢して穴を埋めた。選手起用がことごとく当たった。あの手腕は見事でしたよ。リリーフに回されるなど起用法が安定していなかった桑田真澄も先発で固定して、復活させた。当時はFAで他球団の4番ばかり取る長嶋監督の戦略に嫌気が差していたファンもいた。原監督はFAで大物打者を取ったり、外国人に頼ったりしなくても、現有戦力の若手を使えば優勝できると示してくれた。

 あの頃は巨人戦が毎試合地上波でテレビ中継されていましたが、全試合の平均視聴率は前年より上がった。原監督自身が生え抜きのスターで、晩年はFA移籍の落合博満や広沢克己に追いやられた苦い経験を持っていた。それゆえに、ファンが本当に見たい野球をわかっていると感動した人もいたでしょう」

 その采配は原辰徳が巨人に入団した時の藤田元司監督を彷彿とさせ、黄金時代到来を予感させた。しかし、オフに4番の松井秀喜がFAでメジャーリーグへの移籍を決意。フロントはヤクルトからペタジーニを獲得して穴を埋めようとしたが、大黒柱を失った影響は大きく、2003年はペナントを逃した。9月にはフロントとの確執が伝えられ、同年限りでまさかの辞任となった。その後を継いだ堀内恒夫監督は3位、5位に終わって2年で退任。2006年から若大将が再び巨人の監督として戻ってきた。

「この年は西武から豊田清、中日から野口茂樹を獲得しました。当時の巨人は抑えと左の先発に課題がありましたから、適材適所の補強だったと思います。しかし、2人は怪我もあって活躍できず、チーム全体にも故障者が続出。ベストメンバーを組めずに交流戦で大失速し、その後も大型連敗を繰り返した。この年の結果を受け、原監督は若手、ベテラン、生え抜き、移籍組などと分けて考えることを辞め、『巧い選手ではなく強い選手が欲しい』と言うようになりました。2006年が原監督のターニングポイントでしたね」

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