今年3月、「日常を取り戻す」とコロナ禍からの出口戦略に意欲的だった岸田首相だが、あまり変化はない(時事通信フォト)

今年3月、「日常を取り戻す」とコロナ禍からの出口戦略に意欲的だった岸田首相だが、あまり変化はない(時事通信フォト)

「グリフォン(XBB系統)はアジアを中心に、ケルベロス(BQ.1.1)は欧米で感染が拡大しています。2つのウイルスの共通点は、『免疫回避』、つまりワクチンが効かない可能性があるということ。それだけ感染力は強いといえますが、致死率や重症化率が高くなるという報告はありません」(一石さん)

 上さんも、この2種はオミクロン株の派生のため、さほど恐れる必要はないと話す。どうやら「グリフォン」「ケルベロス」が日本にまん延したとしても、深刻な状況を招く可能性は低そうだ。

 新たな安心材料もある。横浜市立大学附属病院化学療法センターの研究チームの分析によると、新型コロナによる感染者の致死率はパンデミック当初に比べて30分の1以下に低下したというのだ。具体的には、2020年冬から2022年夏にかけて、全世界での新型コロナ致死率は96.8%も低下。日本での致死率は98.4%低下し、季節性インフルエンザの致死率に近づいている。

インフルエンザワクチンを打っておけば大丈夫

 ただし、別の懸念がある。今夏に南半球のオーストラリアでインフルエンザが大流行したことから、今冬には日本でコロナとインフルエンザのW流行が起こる可能性が指摘されている。そうなれば、コロナとインフルエンザに「同時感染」する恐れもある。

 実際に同時感染した40代男性によると、最初、体の冷えを感じて震えが止まらなくなり、やがて発熱。熱は最高で39.8℃に達したそうだ。先に体調を崩していた妻と小学生の子供とともにPCR検査を受けたところ、全員が新型コロナ「陽性」だった。しかし、家族のうち、男性だけがインフルエンザにも同時感染していた。ほかの2人はすでにインフルエンザワクチンを接種済みだったが、男性はまだ接種していなかったのだ。

 一般的に使える新型コロナの治療薬はまだなかったため、男性はインフルエンザ薬の「タミフル」を処方された。インフルエンザの流行は例年12月後半から1月にかけて起こる。同時感染を避けるためには、やはり年末年始の旅行や帰省は自粛する方がいいのか──上さんはこう話す。

「同じ北半球のアメリカでインフルエンザが流行し始めているので、日本でも感染者が増える可能性はあります。その場合、インフルエンザは過去2年間流行していないので、大流行を起こすかもしれない。

 インフルエンザワクチンはコロナワクチンと同じで、重症化予防効果は長期間続き、感染予防効果は短期間しかもたない。ただ、インフルエンザは5類感染症なので隔離措置はありません。重症化を防げればいいので、早めに打っておくことをおすすめします。とはいえ、大流行するかもしれないからといって、旅行を自粛するまでではありません」

 インフルエンザワクチンを打っておけば、同時流行をさほど恐れることはない。そもそもコロナ禍前は、インフルエンザが流行っていても、年末年始に帰省や旅行を自粛する人は少なかった。

「不安を感じる人や、帰省先で高齢者に会う予定のある人は、いまのうちにオミクロン株対応ワクチンとインフルエンザワクチンを打っておくといい。旅行前にPCR検査で陰性を確認しておくのもひとつの方法です」(一石さん)

 コロナ禍で迎える3回目の年末年始は、ただ自粛するだけとは違う、“シン・ウィズコロナ”になりそうだ。

※女性セブン2022年12月1日号

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