ライフ

【オバ記者が病床に伏して考えたこと・第3回】手術の前後で変わった保険金への執着

「卵巣がんの疑い」で手術を受けたのは10月上旬。その前日、落ち着かない気持ちを鎮めようと病室(下)で自撮りした

「卵巣がんの疑い」で手術を受けたのは10月上旬。その前日、落ち着かない気持ちを鎮めようと病室(下)で自撮りした

「やってみなければわからない」が口癖の女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんだが、やってみたくないこともある。その筆頭が病気だ。オバ記者が体調に異変を感じたのは、昨年8月。下腹部が膨らみ、重度の倦怠感や尿漏れに悩まされ続けたが、約1年間放っておいた。この夏、意を決して検査を受けたところ、「卵巣がんの疑い」と告げられ、一も二もなく入院、手術。そこで見たこと、感じたこととは。【第3回。第1回から読む

 * * *
「卵巣がんの疑い」と告知された私は、何でもいいから“希望”のかけらが欲しい。それですぐに思いついたのが、がん保険だ。

 私の母方の祖母は、40才になるかならないかで、子宮がんで亡くなっている。それで私も40代後半のとき、乳房に小さなしこりを指先に感じたのをきっかけに、がん保険に入ったの。

 で、「卵巣が12cmに腫れている」と診断されてすぐに保険会社に電話をしたら、「境界悪性」という言葉があることを知ったの。

 医学的には、「境界悪性」は「良性」と「悪性」の間に位置づけられる腫瘍で、その定義や診断基準はさまざまに分かれるらしいんだけど、保険業界的にはキッチリと白黒が分かれるんだって。

 すなわち、「悪性」なら(卵巣がんなら)掛けていた保険がおりるんだけど(私の場合、その額、ウン百万円!)、「境界悪性」だと入院保険の数万円だけだという。

「医学界で『境界悪性』は、『良性』や『悪性』と同じく、がんの教科書に載っています」と担当医はおっしゃったけれど、保険業界ではがんと認めていないわけ。

 まったく、貧すれば鈍するというのかしら。大金が転がり込んでくるかもと妄想に取りつかれた私は入院当初、「できれば後々面倒にならない程度にがんになって……」なんて、図々しく不謹慎なことを思っていたの。

 だけど、それも手術までのこと。担当医の底抜けの笑顔に触れたら、もう保険金なんかどうでもよくなったし、それに、体に痛いところがあると、お金のことは思い浮かびもしない。ついでに言えば、世の中のことも、個人的な悩みの数々もどうでもよくなるのよね。きっとこれは私だけじゃなくてみんなそうだと思う。

 卵巣の場合、「境界悪性」といってもそれは条件つきの診断なんだという。手術中に病巣を切り取って「迅速病理検査」にかけ、その結果、がん細胞が見つかれば、リンパを切り取るなどの手術をするかどうかを決めるのだという。

 私の場合、手術の段階では「がん細胞はなし。かといって良性でもなく境界悪性」と診断されたのだけど、正式な病名がつくのは約3週間かけて精密な病理検査をした結果だと言われた。

 そして、体の痛みが軽くなった術後5日目に、担当医から手術で取り出した卵巣の写真を見せられた。

「卵巣の中は血液まじりの粘液なんですけど、手術の最中に卵巣の壁が破れたので、きれいに洗ったのですが、もしこの中にがん細胞が混じっていたら、最悪、再手術になる可能性もあります」

 手術ですっかり“シャバっ気”が抜けて、「小さながん細胞で大きな保険金」などと考えたことすら忘れていた私は再び身震い。「最悪」も「可能性」も聞きたくない。正式な結果が出るまでの3週間は、手術のことを思い出すまいと思っていても、どこかに不安がつきまとった。

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン