三谷幸喜氏が脚本を務めた

三谷幸喜氏が脚本を務めた

 創業者が不慮の事故で亡くなると、まるで創業者が乗り移ったかのように会社の隆盛に必死になる。いざ頂の途中まで来てみると、見える景色はすっかり変わっていて、ここまでくると頂上に登りたくもなった。女癖も素行も悪い二代目、おっとりしているが老舗の大手企業と手を組みたがる三代目をもサポートすると見せかけて追いやった。

 しかし、頂上に着いてみると見えるのは下ばかり、ますます気持ちは落ち着かない。自分の地位を理由に結婚した3人目の妻との仲は冷え切ったまま。などと書き出してみると、まるで港区辺りのバーで高級シャンパンを開けている成功者の愚痴のようでもある。800年前も今も組織とは守るべき偉大なもので、その中での出世というのは魅力的なものなのだろう。

『鎌倉殿の13人』がおもしろかったのは、義時には義時の、頼朝には頼朝の、しかし、敵対していた武士たちや彼ら妻や子供にもそれぞれの理想と正義があって、それが少しずつ違うがゆえに摩擦が起き、争いになってしまうところだ。ヒーロー対ヒールではなく、誰もがみんなヒーローもしくはヒロインであると同時にヒールでもあった。組織とはそんな人々の集団で、だからこそあまり会社だの出世だのに興味のない私でも共感する場面も多かったのだ。

 あいまいなイメージしかなかった鎌倉時代のことをよく知ることができた。大河ドラマでは、1966年『義経』、1979年の『草燃える』、1991年『太平記』、2001年『北条時宗』とだいたい20年ごとに鎌倉時代が描かれているそうだ。20年といわず10年後ぐらいに、三谷幸喜さんで鎌倉幕府滅亡が見たいなあ。

◆甘糟りり子(あまかす・りりこ)
1964年、神奈川県横浜市出身。作家。ファッションやグルメ、車等に精通し、都会の輝きや女性の生き方を描く小説やエッセイが好評。著書に『エストロゲン』(小学館)、『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)など。最新刊『バブル、盆に返らず』(光文社)では、バブルに沸いた当時の空気感を自身の体験を元に豊富なエピソードとともに綴っている。

『ひとつ屋根の下』のイメージは一変した(時事通信フォト)

山本耕史の好演も話題に(時事通信フォト)

2020年に大泉と映画でもニセ夫婦役を好演

大泉洋との共演シーンも話題に

北条政子を演じる小池栄子(時事通信フォト)

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