右から評論家の宮崎哲弥氏、『宗教問題』編集長の小川寛大氏、ジャーナリストの鈴木エイト氏
北朝鮮とのつながり
小川:じゃあ、結局どうすればいいのか。本気で教団に罰を与えたければ、解散ではなく破産に追い込むことが、より大きなダメージになるでしょう。
そのために民事裁判で損害賠償額を確定し、教団の資産と照らし合わせるなどの必要がある。教団を潰すには時間はかかるけど、一つ一つ積み上げるしかありません。
鈴木:全国霊感商法対策弁護士連絡会などの集計では、2021年までの被害額は約1240億円ですが、実質はその10倍と言われています。一方で教団が国内にプールする資産は数百億円とされ、賠償には全然足りない。韓国の本部には1000億円ほどあるようなので、それを取り戻せればいいのですが。
宮崎:政治との癒着は断絶できるのですか。
鈴木:教団内部では「今は一時的にバッシングされているだけで、波が終わればまた政治家は教団に協力する」という認識が優勢です。彼らは閣僚クラスや自民党中枢の情報を握り、大勢の政治家が首根っこを押さえられている。この先も政治家との密な関係を小出しにしてくる可能性があります。
小川:政治との関係は切りようがない。自民党と統一教会は半世紀近くのつながりで、歴史的に深すぎます。岸田首相の「一切関係を絶つ」という発言は軽く、逆に信頼を失う発言になっている。
宮崎:私が気になるのは教団と北朝鮮の関係です。『文藝春秋』(2023年1月号)によれば、日本人信者が教団に献金した4500億円がロンダリングされて北朝鮮のミサイル開発に流用されたとのことで、事実なら由々しき事態です。「北朝鮮が脅威だから増税して防衛費を上げる」と主張する自民党の保守派が、日本で集金した金を北朝鮮に送る宗教団体と深くつながっているのだとしたら、保守の正当性に関わる大問題ですよ。
(第2回に続く)
【プロフィール】
宮崎哲弥(みやざき・てつや)/1962年生まれ、福岡県出身。評論家。慶應義塾大学文学部卒業。政治哲学、生命倫理、仏教論を主軸とした評論活動を行なう。著書に『仏教論争』(ちくま新書)、『教養としての上級語彙』(新潮社)など多数。
小川寛大(おがわ・かんだい)/1979年生まれ、熊本県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙「中外日報」記者を経て独立、『宗教問題』編集長に。著書に『神社本庁とは何か』(K&Kプレス)、『南北戦争』(中央公論新社)など。
鈴木エイト(すずき・えいと)/滋賀県出身。日本大学卒業。ジャーナリスト。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。カルト宗教問題を扱う日本脱カルト協会に所属。著書に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』。
※週刊ポスト2023年1月13・20日号