国内

中身が甘い被害者救済法案への危惧 旧統一教会と北朝鮮の関係にも注目

被害者救済法案に効果はある?(写真は旧統一教会創始者の文鮮明氏、現総裁の韓鶴子氏/AFP=時事)

被害者救済法案に効果はある?(写真は旧統一教会創始者の文鮮明氏、現総裁の韓鶴子氏/AFP=時事)

 旧統一教会問題で政治と宗教の関係に注目が集まっている。影響は創価学会と公明党にも波及しており、日本の宗教はターニングポイントを迎えている。評論家の宮崎哲弥氏、『宗教問題』編集長の小川寛大氏、ジャーナリストの鈴木エイト氏が、2023年の宗教について話し合った。【全3回の第1回】

 * * *
宮崎:昨年12月、統一教会(世界平和統一家庭連合)をめぐる被害者救済法案が成立しました。これは支持率が急降下した岸田文雄・首相が政治的に必要だと判断し、急ごしらえした法律だと言えるでしょう。

鈴木:教団を規制する法律ができたことは最低限評価しますが、やはり中身が甘い。既存の法律より行使要件が厳しくなった面もあります。

小川:与党も野党もパフォーマンスの一面が否めません。そもそも統一教会含め、宗教団体の信者の大半は一般的な社会生活を送っています。その信者がマインドコントロールされているからとして財産権を奪うことは、憲法に抵触する恐れもあった。まだ様々な問題が残っているので新法を叩き台に今後さらに議論を深めるべきですが、世の中が「これでよかった」「すべて解決した」という空気感になっていることも危惧しています。

宮崎:規制の実効性が薄く、適用しにくい一方、違憲立法の可能性を否定できない……。解散命令手続きはどうですか。

小川:今後、おそらく1月~2月のうちに解散命令請求が出て、裁判所が解散命令を出すかどうかを審理する。教団側は最高裁まで争うことができ、実際和歌山の明覚寺に解散命令が出た(※注)際は確定まで3年かかりました。それまで世間の関心が持続するかどうか。

【※注/系列寺院による霊視商法詐欺事件を起こした「宗教法人明覚寺」(和歌山県)が2002年、和歌山地裁から解散命令を受けた件。文化庁は1999年に、同団体が「公共の福祉を害した」として和歌山地裁に解散請求していた】

鈴木:解散命令が出ても宗教法人格が剥奪されて税制上の優遇措置などがなくなるだけで、「宗教団体」としての活動は可能です。解散して信者が完全にバラバラになるわけではない。

小川:解散まで数年かかるうちに、教団が資産を隠す恐れもあります。統一教会は韓国に本部があるので日本からそこに送金したり、教団の土地や施設などの名義を信者や別の法人に移す方法です。過去にオウム真理教は資産の名義を変え、当局の差し押さえを逃れた。

鈴木:外為法に抵触しない100万円弱の現金を、信者が直接韓国に渡って届ける方法もある。つまり、抜け道が多いんです。

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン