私もわりと排除された側だから言えるんですけど、やっぱり広告代理店と政治家の介入はあると思っています。みんな、わかってるんじゃないですかね。辛辣なことを言うコメンテーターがいなくなったりしているじゃないですか。「こういう番組作りが望ましい」って言われたら、抗うものは排除されます。でも、それってつまらないし、考える力が失われてしまって危険だなって思うんです。
〈テレビから求心力が失われた理由は、そうした“大人の事情”が大きいのだろうか。そう尋ねると、意外な答えが返ってきた〉
それは……渋谷のスクランブル交差点が強すぎるからじゃないかな? だってお願いされたわけでもないのに、何かというとみんなあそこに集まって大騒ぎしますよね。芸人がどれだけ漫才をやったとしても、あのパワーには敵いませんよ。
それと同じで、『M‐1』もそうですし、プロレスでも野球でも、いまって有観客のイベントにはすごく人が入っている。それは素晴らしいと思うんだけど、その分、リアルタイムでテレビを見る時間はなくなるわけで、『TVer』で見ればいいってなる。
それに、番組自体も何が何でもリアルで見る感じではなくなっていますよね。同じようなメンバーが同じような切り口の番組に出てる。私も出まくっていたから人のことは言えないんだけど、せめてそれぞれの色をつけて差別化してほしいなって思います。
〈さらに、昨今の過剰な“傷つけないお笑い”ブームにも疑問を投じた〉
『M-1』でウエストランドが毒舌ネタで優勝したのも、みんなどこかでそう思っていたことだからですよね。ルッキズム(外見至上主義)的な問題についてもね、見た目がツッコミどころの芸人は結構つらいものがある。個性だし。もちろん傷つけたら「ごめん」って謝るべきだけど、互いの言い分を言い合う機会もないまま、すぐ文書で抗議する最近の流れは窮屈ですよね。何より、面白いのに“面白いと感じちゃいけない”っていう風潮が気持ち悪いんですよ。
だって、人間の性で、どうしても笑っちゃうことってあるじゃないですか。出前中のおそば屋さんがすっ転んでおそばが全部こぼれたら、かわいそうだけどつい笑っちゃうでしょ。もちろんすぐ助けますけどね。
テレビって、もっと自由で楽しいことを表現していいと思うんです。それには、上と下の世代をつなげられる私なんかが適任と思うんだけど、どうかしら(笑い)。
【プロフィール】
山田邦子/1980年のデビュー以来、お笑い、女優、歌手など多方面で活躍。YouTubeチャンネル『山田邦子クニチャンネル』は総再生回数1500万回を突破。
取材・文/辻本幸路
※女性セブン2023年2月9日号