犯罪人引渡し条約によって韓国での刑期終了後に日本へ
捜査が長引けば、それだけ犯人に逃げられる確率は高くなる。リアル情報を少しでも早く手元に集め、各県警と情報の共有化を図らなければ外国人犯罪者の検挙は難しくなるのだ。
だが日本と韓国との間には2002年に結ばれた条約があった。「犯罪人引渡し条約」である。これは国外逃亡犯の引き渡しを求める請求が相手国からあれば、原則的に引き渡すという条約である。つまり、韓国人だろうが日本人だろうが、日本で罪を犯した者が、韓国国内に逃亡していれば引き渡しの請求ができる。もちろんその逆も同様だ。
もちろん、たとえ条約があっても、被疑者の引き渡しを要請するには証拠固めをしなければならない。「韓国側にも、自国民を他国に引き渡すしかないと納得させなければならないからだ」(元刑事)。事件現場ごとに聞き込みを行い防犯カメラの映像を確認、指紋などを採取した。遺留品などによるDNA解析も行い、証拠が固められていったのだ。
並行して入国管理局にも捜査の協力要請し、彼らの渡航歴を調べた。被疑者らは他にも事件を繰り返していた可能性が高かったからだ。すると日本と韓国の間を頻繁に行き来していたことが判明する。元刑事は「前回はこのメンバーとこのメンバー、今回はこっちのメンバーとあっちのメンバーと、入国のたびに組み合わせが違っていた」。同じグループの人間が入れ替わり立ち替わり来日し、それと同時期に、必ず類似の事件が都内を中心に発生していたのだ。警察は入念に証拠を固め、韓国側に引き渡しを要請した。
「被疑者らは韓国でも窃盗や強盗を繰り返しており、次々と捕まって服役していた。韓国での刑期が終わると、終わった順番に1人、2人と日本側に引き渡してもらった。時間はかかったが全員を逮捕した」(元刑事)。犯人らは、それぞれ東京地裁で無期懲役などの刑を言い渡され、日本の刑務所に服役したという。