ビジネス

三井物産、関西電力、JR西日本… 大企業が取り組む次世代型水産業「陸上養殖」の最前線

FRDジャパンが千葉県木更津市の丘の上で育てる生サーモンブランド「おかそだち」

FRDジャパンが千葉県木更津市の丘の上で育てる生サーモンブランド「おかそだち」

 日本の水産業の漁獲量が減少するなか、海や川から離れて魚介を育てる陸上養殖に近年、異業種からの参入が相次ぐ。市街地でも行なえる、寄生虫が発生しにくい、安定供給が可能……とメリットが多く、未来の食糧問題を解決する切り札の一つだ。最前線の現場をレポートする。

三井物産から9億円出資を得た研究者たちが丘の上で魚を育てる

水替え不要の閉鎖循環式陸上養殖技術を確立した実証実験プラント

水替え不要の閉鎖循環式陸上養殖技術を確立した実証実験プラント

●FRDジャパン トラウトサーモン「おかそだち」

 見晴らしのいい丘にポツンと佇む工場のような建物。FRDジャパン(さいたま市)の実証実験プラント(木更津市)を訪れると、縦横無尽に張り巡らされた濾過用パイプのもとで数千匹のサーモンが泳いでいた。

 陸上養殖には飼育水を海や川などから取水する「かけ流し式」と、濾過・浄化して水道水や地下水などを循環させる「閉鎖循環式」がある。ベンチャー企業である同社は独自の閉鎖循環式技術を誇り、「海に依存しない陸上養殖」の世界的な普及を使命に掲げる。バクテリアを活用した高度な濾過技術に注目した三井物産から出資を受け、トラウトサーモンの陸上養殖を開始。年間生産量は30トンだが、千葉県内に建設予定の商業プラントでは3500トンを目指す。

「水替えをほとんど必要としない、地球に優しいサステナブルな養殖システムです。絶えず濾過されている約15℃のきれいな水で育ちます。海や川からのウイルスや寄生虫の侵入リスクがないため、抗生物質は一切使わず、生で安心・安全に食べられます」(事業開発・マーケティング担当の宮川千裕氏)

卵から約1年かけて2.5~3キロに育つと出荷する

卵から約1年かけて2.5~3キロに育つと出荷する

毎日採水してアンモニアや硝酸の濃度などをチェックし、水質を分析する

毎日採水してアンモニアや硝酸の濃度などをチェックし、水質を分析する

養殖場をモニターで管理。酸素濃度や水温などを常時モニタリング

養殖場をモニターで管理。酸素濃度や水温などを常時モニタリング

パイプや濾過水槽などが組まれた濾過装置が屋外に広がる。奥は養殖建屋

パイプや濾過水槽などが組まれた濾過装置が屋外に広がる。奥は養殖建屋

木更津魚市場直営の海鮮食堂「KUTTA」で供する「木更津おかそだちサーモン丼」

木更津魚市場直営の海鮮食堂「KUTTA」で供する「木更津おかそだちサーモン丼」

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト