安倍晋三・元首相はプーチン大統領をどう見ていたのか(時事通信フォト)

安倍晋三・元首相(時事通信フォト)

「強烈なリアリスト」の習主席が自信をつけたことで日本の軍事的脅威は一段と強まった。

〈南シナ海を軍事拠点化し、香港市民から自由も奪った。そして次は台湾を狙っている〉
〈今、習氏は異論を封じている。非常に危険な体制となっている〉

 こちらもリアリストの安倍氏はそう受け止め、経済的には習近平の「一帯一路」に対抗してTPPによる自由貿易圏、安全保障では「自由で開かれたインド太平洋」構想や日米豪インドによる「クアッド」(4か国戦略対話)など多国間協力の枠組みをつくって“中国包囲網”を敷いたことを語っている。外交・安全保障が専門の評論家・潮匡人氏が語る。

「回顧録の対中外交の中で最も重要なのは、習近平が安倍氏に『米国に生まれていたら、民主党か共和党に入党する』と語った部分です。安倍政権時代、中国はタカ派の安倍総理を警戒し、日中関係は一層冷え込んだといわれた。実際、習近平は首脳会談で安倍さんと握手しても笑顔を一切見せないとか、身体を安倍さんのほうに向けないなど、露骨に距離を取るポースを取っていた。

 しかし、首脳会談では徐々に距離が縮まり、紋切り型の応酬ではなく、互いに本音をぶつけ合う関係になっていたことがわかる。だからこそ、安倍さんは習近平の変化から中国の脅威が増していることを感じ取り、憲法解釈変更による集団的自衛権行使を容認して日米同盟を深化させ、国内的には特定秘密保護法を制定して中国の脅威に対する備えを強化してきた。

 その一方で、習近平やプーチンについて、『独裁政権は、ある日突然倒されるわけです。権威主義国家の指導者のプレッシャーの大きさは、我々の想像を超えているんじゃないかな』と将来を暗示させるような見方をしているのが印象的です」

※週刊ポスト2023年3月10・17日号

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