目立つ場所に掲げられていた朝乃山のグッズ
大関復帰は最速で年明け以降だが…
来場所の幕内復帰が決定した朝乃山にとって、“大関復帰”への道のりはここからが本番とも言える。幕内からの十両陥落力士の数にもよるが、来場所の番付は前頭14~17枚目のあたりになる。似た例として2020年7月場所で幕尻優勝(前頭17枚目)した照ノ富士を見ると、翌9月場所に東前頭筆頭に昇進。同年11月場所は小結で13勝2敗、翌年の1月場所は関脇で11勝4敗、翌3月場所に関脇で12勝3敗での優勝となり、「三役で36勝」の成績で大関に昇進している。幕内復帰から大関復帰まで5場所かかったわけだ。若手親方のひとりはこう話す。
「2020年1月場所で幕尻優勝した徳勝龍も、翌場所の番付は前頭上位だったことからもわかるように、幕内下位で優勝してもいきなり三役にはなれない。大関昇進には三役で33勝が目安といわれ、朝乃山が再入幕で優勝したとしても、三役になるのに2場所、その三役で3場所33勝以上だから、大関昇進するためには5場所かかる計算です。大関昇進は最速でも年明け以降になる。ただ、ガチンコ全盛時代で上位力士が星の潰し合いをする構図が何場所も続いているので、朝乃山を“最も大関に近い存在”“番付崩壊時代の救世主”として期待する声が根強くあるような状況だ」
一方で、大混戦の春場所では元横綱・白鵬の宮城野親方の弟子たちの存在感が大きかった。新入幕の北青鵬が初日から4連勝し、中盤は苦労したが14日目に勝ち越しを決めた。十両ではデビュー2場所目の落合が9日目に勝ち越しを決め、勝ち星を2ケタに乗せた。さらに幕下では落合に刺激を受けたであろう西幕下3枚目の川副、東幕下8枚目の向中野が早々に勝ち越しを決めた。
「川副は日大出身で元学生横綱、鳥取城北高出身の向中野は白鵬が“これからの宮城野部屋を背負っていく逸材”と評する力士です。宮城野部屋には元キックボクサーや元バスケットボール選手など異スポーツ経験者を積極的に入門させている。また、“1部屋につき外国出身力士は1人”というルールがあるなかで、“日本在住10年以上なら外国出身力士として扱わない”という例外規定に着目し、モンゴルから相撲留学した有望株が中学、高校、大学の10年間にわたり日本で生活したうえで入門してくるようなルートも確保している。
現役時代から白鵬の野放図な振る舞いを苦々しく見てきた協会幹部としては、白鵬の部屋にばかり有望株が集まる状況には複雑な思いがあるでしょう。そこに唯一対抗し得る存在しても、朝乃山が期待を一身に背負っているわけるです」(前出・担当記者)
果たして朝乃山は、ファンにとっても協会にとっても救世主になれるのか。
※週刊ポスト2023年4月7・14日号