香川の中車襲名について聞かれ「いや、別に」
香川は、当代の二代目市川猿翁(83才)の息子。猿翁と段四郎さんは兄弟のため、香川と猿之助は従兄弟にあたる。
「もし仮に段四郎さん、奥さん、猿之助さんが亡くなっていたら、一人っ子の猿之助さんに配偶者も子供もいないので、段四郎一家の財産は、亡くなった厳密な順番や遺言書などに左右されますが、いちばん近い血縁である兄・猿翁さんが継ぐ可能性が多分にある。その猿翁さんにしてもご高齢です。そのうちに、長男の香川さん、そして團子さんが継いでいく、と考えるのが自然でしょう。
猿之助さんはそれに強い抵抗感があったと考えている梨園関係者は多い。というのも、猿之助さんが中車さんに複雑な思いを持っていることは、周知の事実だったからです」(前出・歌舞伎評論家)
香川は、猿翁と女優・浜木綿子(87才)との間に生まれたが、2才のときに両親は離婚。香川は浜に引き取られたため、「歌舞伎役者」として育ったわけではない。香川の中車襲名は2012年、猿之助襲名と同時に行われた。香川は40代半ばを過ぎての歌舞伎役者デビューだった。
「猿翁さんの直系は、あくまで香川さんであり、團子さんです。香川さんは“いずれ長男・團子に猿之助や猿翁を継がせたい”という希望もあって、歌舞伎界に参加した。40年以上ぶりの猿翁さんと香川さんの父子和解ということもあり、大きな注目をされました。
一方の猿之助さんは、亀治郎時代の苦労を経て、意気揚々と襲名を果たしたにもかかわらず、あくまで傍流の家系です。“團子さんに猿之助の名跡を継がせるワンポイント登板”のような印象さえ持たれてしまった。猿之助さんが香川さんに強烈な敵愾心を持つのも理解できます」(テレビ局関係者)
その思いがあふれ出す瞬間があった。猿之助襲名直前に出席した、後援会の食事会でのことだ。
「トークショーのとき、襲名に向けた意気込みなどを明かしていましたが、運営側が澤瀉屋の系図を掲げながら、香川さんの中車襲名に水を向けると、『いや、別に。どうでもないです』と素っ気ない反応しか示さなかったんです」(会の参加者)
中車襲名披露の歌舞伎演目は『小栗栖の長兵衛』。本能寺の変の後、敗走する明智光秀を竹槍で討った農民の長兵衛を題材にした物語だ。
「澤瀉屋ゆかりの演目ではありますが、セリフ回しもわかりやすく、かなり現代劇寄りに作られている『新歌舞伎』です。この演目について聞かれた猿之助さんは『(香川は)やっぱり古典はできませんから、新歌舞伎から入らないと』と、歌舞伎初心者の香川さんへの皮肉を口にしていました。
また、同時に襲名した團子さんについても、将来の猿之助襲名の可能性を聞かれて『ボンクラだったらダメだし、別の人に継がせます。それでもダメなら、止め名にしちゃう』と、かなり踏み込んだ発言をしていました」(前出・会の参加者)
「止め名」とはその名跡を誰にも継がせないということだ。