猿之助が

猿之助が“遺書”のような書き置きをあてた俳優も話題に(写真は2023年春)

 当代である四代目猿之助は、こうした一門のしがらみから逃れようとしていた。四代目段四郎を父、三代目猿之助を伯父に持ちながら、どちらの名跡を継ぐことなく、亀治郎として生きていくはずだった。

「『自分には澤瀉屋の血が流れている』としつつも、『猿之助にはならない。死ぬまで亀治郎でいたい』と公言していました。大きな名に助けられるのではなく、自分のやりたいことに挑戦したいと考えていたのでしょう」(別の歌舞伎関係者)

 それを象徴するような出来事があった。猿之助は2003年、父とともに猿翁の一座を離脱している。

「この離脱には“恩知らず”“明日から仕事はない”と、ののしる声もあった」(前出・別の歌舞伎関係者)

 しかし、これを機に歌舞伎以外の舞台やテレビへも出演するようになった猿之助は、後にこの経験を人生の転機だったと振り返っている。

「離脱理由を猿之助は、“偉大な人物である伯父から離れる必要があった”と説明していますが、実際のところは、一座の中では脇役に甘んじなくてはならないことが不満だったのでしょう。父・段四郎さんもその兄である猿翁とは異なり、主役を張るタイプではありません。父が脇役である以上、息子が主役を張るのは難しい」(前出・別の歌舞伎関係者)

 離脱の理由を別のところにみる向きもある。

「歌舞伎役者にとって最高の褒め言葉は“声よし、顔よし、姿よし”。この三拍子が揃っていることです。しかし、猿翁の妻の藤間紫さんは、猿之助の“見た目”に思うところがあったと言います。猿之助としては、実力が評価されないことを不満に思っていたのでしょう」(芸能関係者)

 しかし、猿翁が病に倒れると、次の猿之助探しが始まる。猿翁の息子・香川は歌舞伎の経験がない。名跡を血縁者が継ぐとなれば、実力が伴っているのは猿之助しかいなかった。2012年、猿之助は四代目を襲名し、その期待に応えようとし始める。古典の舞台にも立ちながら、新しい歌舞伎を模索し始めたのだ。

「三代目とは異なる新風を歌舞伎界に吹き込もうと、人気コミック『ワンピース』の歌舞伎化に力を注ぎました。これが大ヒット。ところが、2017年の再演時には公演中に舞台装置に衣装が巻き込まれ、左腕を開放骨折する大けがを負います。腕の切断はおろか、数cmずれていたら命を落とすほどの大事故だった」(前出・歌舞伎関係者)

 2020年にはドラマ『半沢直樹』(TBS系)に出演した。

「クセの強い役柄が思わぬ大反響になった一方、その時期はコロナ禍で歌舞伎の興行がいつも通りにはできなかった。歌舞伎役者の存在を多くの人に知ってもらうことができたのはたしかですが、ドラマの勢いをそのまま公演に引っぱり込むことができない心苦しさもあったと思います」(前出・歌舞伎関係者)

 そのコロナ禍も落ち着いてきて、歌舞伎座にもほかの劇場にも客足が戻り始めた矢先に、香川が性加害報道で表舞台から姿を消し、続いて起きたのが今回の事件だった。

「初代の破門スキャンダルを始まりとして、澤瀉屋はトラブルが絶えない。修羅道をひた走っているように見えます。よからぬ“気”が呪いのようについているのかもしれないと思わずにはいられない」(前出・歌舞伎関係者)

 152年の歴史がある澤瀉屋、そして脈々と続いてきた猿之助という名跡は、逆風にどう立ち向かうか。

※女性セブン2023年6月8日号

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