「死ぬのはお前だ」と脅迫
Googleマップで検索すると、地下鉄門前仲町駅から徒歩5分ほどの公園内にある管理事務所が表示された。3D写真で確認すると、シャッターが閉まっている。こんな場所に住人がいるわけがない。詐欺師の言うことだから、この程度のことでいちいち目くじらを立てるのは野暮だ。「私の友人になってくれるとは嬉しい限りです」と返信し、本題を切り出した。国際ロマンス詐欺について説明した、私の最初のメッセージは読んでいるのか。
「読みました」
「水谷竹秀先生」
「先生」の後ろには笑顔の絵文字まで添えられている。親しみを込めたつもりなのか、あるいはおちょくっているだけなのか。さらに問い詰めると、
「あれは詐欺ではない。投資に失敗しただけだ。彼女の欲望が原因だ」
「あなたはジャーナリストです。証拠もないのに人を責めてはいけない」
と開き直ってきた。挙句には、
「私と一緒に投資をしませんか? リターンは20%」
と投資の勧誘までしてきたのだ。まともにやり取りをしても本音は引き出せないかもしれない。そう思っていると相手の出方が少し変わった。
「リベンジしたい。第二次世界大戦で日本が犯した罪について謝罪をさせたい。日本は戦犯国だ」
日本の戦争犯罪に対する報復ならば、日本人を標的に詐欺行為をはたらいても許されると思い込んでいるのだろうか。犯罪の正当化になっていないどころか、ただの論理のすり替えである。おそらくは、私がこの犯人の詐欺行為を追及しようとしたので、頭にきたから戦争犯罪の話を持ち出しただけではないか。
そこで相手が中国人かどうかを尋ねてみた。犯人はその質問を既読スルーし、突如として安倍晋三元首相の銃撃事件を持ち出してきた。このやり取りは同事件(2022年7月8日)から1週間後のことで、日本社会はまだその衝撃が冷めやらぬ渦中だった。そして、「次に死ぬのはお前だ」と脅迫してきたのだ。
「お前が私に脅迫してきたのと同じことをやっているだけだ。私はお前を訴える」
沙也香のアカウントのスクショも届いた。何の意図があるのか分からないが、女性の乳房などの写真も送りつけられた。完全に私をバカにしている。日本にいないからか、決して逮捕されることはない、と高を括っているのだろう。