横浜高校出身の生え抜きとして人気を博した石川
父親から託された「自分らしく生きろ」のメッセージ
自宅がある東京と静岡の往復生活が続いた。プロ野球の解説など東京で仕事がある以外は実家の静岡に戻る。抗がん剤が効かないため、食事療法やなどがんの治療に良いと見聞きしたことに取り組んだが、幸夫さんは日に日に衰弱していく。だが、WBCなど野球の話をする時は楽しそうだった。石川の後輩の筒香嘉智(元レンジャーズ傘下3Aラウンドロック)の様子を気に掛けることも。「早くDeNAの試合を見たいなあ」とつぶやいていた。石川も2人で他愛ない話をする時間が幸せだった。
3月から病院に入院すると、顔が腫れて呂律が回らなくなった。4月3日の夜に容体が急変したと一報が入る。石川は東京で仕事を終えて最終の新幹線で病院に向かった。幸夫さんの呼吸は荒く意識はなかったが、手を握り締めるとギュッと握り返してきた。翌4日深夜の0時26分。享年84で息を引き取った。
「実は4日に退院予定だったんです。でも、自宅療養だったらおかん(七枝さん)が大変な思いをすると思ったんじゃないですかね。周りに迷惑を掛けることを嫌がるおとんらしい最後でした」
石川が大事にしている宝物がある。DeNAを現役引退した際、幸夫さんに「自分らしく生きろ」と直筆で書いてもらったボールだ。
